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殿下の執務室(従者視点)


毎回3話終了後に1話、苦労性な殿下の従者視点でのお話を挟みます。



 俺の名前はスペリア・カートン。これでもカートン侯爵家の次男です。

 そしてこの国の第一王子である、クレス・グレフィアス王太子殿下の従者をしています。


 そして俺は殿下のせいで、いつも胃痛が酷いんですよ!!

 いつ従者をやめてやろうかといつも悩んでいるところですが、どうも辞めさせてもらえないらしいです。



 そして今日も殿下の病気が始まりそうで、俺はため息をついているところでした。


「はぁ、今日もエイミーは天使だった……」


 はい、でました!

 帰ってからの開口一言目、エイミーさまへのベタ褒め!!


「あんなことをした僕に対して、全てを許してくれる女神のような微笑み……」


 いやいや、エイミー様が殿下に微笑むなんて絶対にないから!それ幻覚ですよ、殿下!!

 それと天使から女神になってんぞ!!!


 と、心のツッコミはこのくらいにしまして、俺は殿下に気になる事を聞いてみる事にしました。


「殿下は、何故そんなアホみたいなキャラで、エイミー様に告白をしているのですか?」


 そうなのです、この王子本当は凄いキレ物で時期王としては完璧すぎる人物なのです。

 それなのに、わざわざあんなアホなキャラで迫られたら、エイミー様だってお怒りになられるのは当たり前です。

 そのままの姿の方が、理知的で絶対にカッコいいと思うのですが……?


「決まってるだろ、少しアホっぽい方がモテる!!って、フィアが言ってたからだ!!」

「ご自身の判断じゃないじゃないですか!!!しかも、少しどころか滅茶苦茶アホですけど!!?」


 フィア様と言うのは、殿下の婚約者様であるフィーリア・ブレイズ侯爵令嬢のことですね。

 完璧な殿下にとって、唯一の苦手な存在とも言えるかもしれません。


「だって、フィアに刃向かったら僕がタダじゃ済まないんだぞ!!あの女、すぐに僕を脅してくるんだ……きっと僕はあの女に呪われているんだ!!」


 昔から殿下は、一つ年下のフィア様にパシリのように扱われていたために、そうとう恐れているようです。

 しかし、殿下申し訳ありません。


「そんなフィア様から手紙を頂いております」

「ひぃいい!!それを開けずに燃やしてくれ!」

「そんなことしたら、殿下が燃やされますよ?」

「なんて恐ろしいことを言うんだ!とりあえずスペリアが代わりに読んでくれ」


 しょうがないですね、手紙を開きましょうか……って、殿下はどこへ?


「殿下!?なんでそんな隅の方で、耳を塞いでいるのですか!!?」

「いや、何が起きるかわからなくてな……」

「え?これ爆発物なの!!??」


 そんなにビビらなくてもと最初は思いましたが、確かにフィア様からの手紙ですからね。……開けた瞬間爆発するかもしれませんもんね。

 だから俺は凄く丁寧に、そっとその手紙を開きました。

 とりあえず、何も起きなかったのでセーフですね。


「では、手紙を読みます」

「うむ……」

「拝啓、とかどうでもいいから、早く可愛い可愛いエイミー様をワタクシに紹介して下さいませんと、ワタクシ殿下に何をするかわかりませんですのよ?爆破されたくなければ、早くエイミー様を出しなさい!……以上です」

「え、なにその文章、怖い!!!!!」


 それは俺の台詞ですよ!!!

 こんなの手紙の内容が爆発物じゃないですか!?

 正直読んでる俺の方が怖くて、途中から震えていましたからね。


「とにかく、まだフィアにエイミーを見せるわけにはいかない!!」

「いいんですか?爆破されますよ……?」

「いやいや、フィアでも流石にそこまではしないさ」


 本当でしょうか?あのお方なら私は違う意味で爆破してくると思うのですが……。


「それに、フィアはどうせもうすぐ同じ学園に入学するんだ。あいつが入って来たら、違う意味で大変な事になる!その前にエイミーの好感度を少しでも上げておかないと……僕には時間がないから」

「今更上げたところで、好感度は絶望的でしょうね」

「何故だ!?エイミーは僕のこと好きな方なんじゃ!?」

「何で自信ある感じなんですか!!!?」



 焦っているのはわかりますが、それにしても本来なら冷静なはずの殿下がこんなに振り回されているなんて……それも全て殿下の父親である国王陛下との約束があるからですね……。

 だからこそ、殿下には一度落ち着いていただいた方がいいでしょう。ここは年上として相談にのってやりますか。


「では、そんな殿下の心配を解決するために、私と少しお話をしましょう。確か陛下とのお約束は、卒業までにエイミー様と周りの説得に成功したら婚約を許す、と言う物でしたよね?」

「そうだ。父上も初恋の人と恋愛結婚を無理矢理押し通しているから、僕の気持ちがわかると……しかしダメだった場合、卒業後フィアとすぐに婚姻を結べと恐ろしい事をいうのだ!」


 正直、それはフィア様が無理にでも先延ばしにするような気がします。

 あの方、殿下の事嫌ってますからね……。


「ならいっそ婚約解消をされてはどうですか?」

「いや、それはまだ出来ぬ……あちらは侯爵家の中では一番権力を持っているからな。今そんなことをしてしまえば……」

「してしまえば……?」

「国中の婚約者候補が、とてつもなくカッコいい僕をめぐってこの王宮に押しかける!!!」


 はーん?何言ってんだこいつ!!?

 さっき、侯爵家の権力うんぬんどこいったんだよ!!!


「何故、そんな興味なさそうな顔になるのだ!」

「いや、自己評価は流石だと思いまして……」

「でも実際に侯爵家の令嬢が婚約者であるおかげで、反発などは全く出ていないのだ。よく考えてみろ、もし今のエイミーが僕の婚約者だったら?」

「凄い反発されますね」

「だろ?」


 何故そんな自信満々に仰っているのか……。ようはそれを解消しなければエイミー様と婚約はできないと言う事なのに。


「では、帰ってきたばかりの殿下には申し訳ないですが、エイミー様との仲を応援してくれそうな貴族一覧の確認をお願いします。そしてどなたと会談されるかを今日1日でリストアップして下さい」

「おぉ、さすがスペリアだ。僕の要望にしっかりと答えてくれたんだな」

「いえ、それが仕事ですから!!」


 殿下に遊ばれるのは仕事じゃありませんから!!


「じゃあ、悪いがもう少し手伝ってくれ。いまだに僕の婚約者候補とされている令嬢、その親達の裏を探ってくれ」


 殿下は王太子である以上、妃を何人も送り込まれる可能性が有るのですが、婚約者様がいたとしても他の候補者達はまだまだ多く存在するのです。

 その裏を探れと言う事は、候補者を減らせという事なのですね……。

 こういう裏で頑張っているところを、エイミー様に見せてあげたいものですよ。


「……畏まりました。すぐに取りかかります」

「それと!」

「はい?」

「明日エイミーに近づくための作戦を考えたから、聞いてくれないか!」

「え?今から仕事……」

「それよりもこっちのが大事だ!!!」


 そんなわけあるかぁぁあああぁあ!!!!



 こうして俺は今日も激しく胃を痛めつつ、エイミー様に関してだけはアホになる王子の従者として、虚無になりながら働くのでした。


 ただ言わせてもらうのでしたら….。

 殿下、その作戦は絶対にやめた方がいいです!!


 しかし、俺の願いは聞き届けられる事はありませんでした。

 早く、従者辞めたい……俺の願いはそれだけです。


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