殿下の執務室 6(殿下の従者視点)
今日の殿下はとにかく揺れていますけど?
そう思って暫くぼーっと見てしまったスペリアです。
「で、殿下?一体どうして揺れているんですか?」
というか、それ貧乏ゆすりですか?
「いや、実は本当は自分を抑えられなくなるような、ビックリなことを聞いてしまってだな……」
「どんな話です?」
「え、エイミーが彼氏を作るためにパーティーに行くと!!!」
「えぇぇええええ!!?で、殿下……だ、大丈夫……な訳がないですよねーー!」
だからって、さっきよりも激しく揺れるのはやめて下さい!!!
座ってらっしゃるから、机も一緒に動いてしまって書類とかが落ちまくってるんですけど???
「ああああ~!!!エイミーの前では余裕ぶって、いいよ。なんていってしまったけど心配で仕方がない!!!!」
「気持ちはわかりますけど、ああいうパーティーに言ってもそんな簡単に恋人なんて出来ませんよ」
「本当か?」
うわっ!急にピタリと止まらないで下さいよ。ビックリして声が出そうになったんですけど……。
顔には出さないように、柔かに落ち着いて答えてあげましょう。
恋人歴=年齢の俺ですからね、信憑性は高い筈です。
「もちろんです、パーティーに行ったとしても偶然気の合う相手に出会って、しかもお互いトキメクなんてこと殆どありませんよ!よくて良い人どまりか、友達になれるぐらいですかね」
「さすが、恋人=年齢の言うやつの言葉は信頼できるな!!」
ぐっ、自分で言うのは良いけど、人から言われたくない言葉です……!!
「だから安心して、エイミーさんを信じて上げてみてはどうですか?」
「いや、良い事を思いついたぞ!!」
「なんで思いついちゃうんだよ!!??」
「ん?」
「いえ、何でもありませんよ」
あぶないあぶない、口に出していました。
ただ、こういうときの殿下の閃きは今までも酷いのが多かったはずです。俺に被害が来ないように用心した方が良さそうですね。
「では、俺の閃いた素晴らしい作戦を伝えよう」
「凄く自信満々ですけど、どんなのですか?」
一応聞くだけならね、それだけなら被害はないはずだ。
「スペリアが変装して、エイミーを見守る」
「いや、無理です!!!変装って、その前に年齢的な意味で無理があるでしょうが!!?」
「え、そうか……?スペリアなら、まだ全然若く見えるって!」
「お言葉は嬉しいですが、流石にバレますよ?だってあのフィア様が主催なんですから、俺の変装なんてすぐにわかっちゃうと思います」
それ以前に俺はフィア様に会いたくない。
しかも変装している姿を見られたらなんと言われるか……!!
「よし、わかった!フィアに直談判してくる!!」
「え!?何をいうんですか??場合によってはコテンパンにされますよ!!?」
「いや俺はあの悪魔に変装する許可をもらって、パーティーに参加する!!」
「そうですのー、殿下はパーティーに参加を……なんだか面白そうな話をしていますわね?」
「そうだ、俺はパーティーに……って!!!うわぁ、フィア!!!!」
突然現れたフィア様は、扉を閉めると、楽しそうに俺たちを無言で見つめ続けた。
いや、俺は関係ないから俺のことは見ないで下さいよ!!
「よし、ここは単刀直入に言う!!フィア、エイミーが行くパーティーに俺も参加させてくれ!!!」
「駄目ですわ」
「そんな即答しなくても!!!!」
「でも、駄目なものは駄目ですわ」
「いや、パーティーのお手伝いでもいいから!」
いやまって、それは王子が絶対にやっちゃいけないやつだとおもうのですけど!!?
「まったくしつこい男ですわねぇ~。でももしエイミー様が困ったことになった場合、やはり助ける人物は必要ですわよね?」
「え?」
「殿下はパーティーの護衛の一人に紛れて頂けますの?確か剣術は……」
「得意だ」
「でしたわよね。それとその日一日殿下の代わりとしてスペリア様をエスコート役としてお借りしても?」
え?
「スペリアなら大丈夫だ!どうせ僕もそこにいるのだから、コイツもついて来ないといけないからな」
「いやいや、俺の意思は?」
「何言ってるんだ。スペリアは僕の従者なんだから僕に付き添うのは当たり前だろ?」
「スペリア様、殿下の仰る通りですわよ。もう少し自分の立場をお考えになったなら?」
そうニマニマ微笑むフィア様を見て、俺はしてやられた事に気がついた。
これは、俺にエスコートしてもらうための大掛かりな罠だったのか……!?
「そうですわ、せっかくだもの二人とも一度我が家で変装するための衣装合わせをしましょう!」
ニッコリと微笑むフィア様に俺は嫌な予感しかしない……。
「いや、俺は変装ではなくそのままですよね?服は自分のから……」
「駄目ですわ!!スペリア様、ワタクシの横に並ぶのでしてよ?だからワタクシがしっかりと選んで差し上げますわ」
「なんだか面白そうだから、スペリアと一緒に行くぞ!」
「で、殿下!!?」
くっ、殿下の裏切り者!!
なんでこういうときだけは、気が合う2人なんだよ!!?
「では、パーティーが楽しみですわね……」
「ああ!!」
そんな楽しそうな2人を見て、俺は胃が痛くなるのです。
そしてその後、フィア様の実家である侯爵家で着せ替え人形のごとく、衣装を着せられた事は……もう思い出したくもありません。




