怒血の烙印
毎夜毎日、悪夢をみる男ベン
彼には喜怒哀楽の「怒」という感情がない
そして悪夢の中では怒りという感情が込み上がる前に決まって目を覚ます
この悪夢の正体はいったいなんなのか…?
今宵もゆっくり目を瞑る
しかし眠れるのは決まって2時間後だ
目を瞑り考えるのは今宵の悪夢の内容についてだ
それを考えただけで顔が歪む
眠りたくないのである
静寂の中スゥッと意識が飛んでいく…
気がつけば灰色の世界に自分がいる
悪夢の中では自分が自分をみているのである
しかしベンはこれが夢だとは気付かない
確かに自分が目の前にいるのにだ
そしてその意識の中に毎回、思い浮かぶ思想がある
(あの建物には近づいちゃいけない!)
この灰界に寂しげにポツンっと佇んでいる
あの校舎である。
周りを見渡せど闇だけが広がるこの灰界に
ひっそりと不気味に佇むその校舎を見つめていると
ベンは妙な悪感を覚えるのである
そんな不気味な雰囲気のこの世界で
カツッカツッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッ
静寂を切り裂くように音が鳴り響く!
自分が走り出したのであります
ゆっくりジョギング程度の速度で
自分がその校舎の周りを一周…二週…三週…苦しそうに走り続ける
なぜ自分が走っているのか…
理解が追いつかないベン
そして自分が地面を蹴る音、苦しそうに息を吐き出す音に新たな音色が重なってくる
歌であります。
校舎の中から歌が聞こえてくる
それは楽しげな音色では断じてない!
自分の知らない言語で寂しげな歌が聞こえる
子供達のような声…低い男の声…女性の声…様々な声色が混じりあったその歌声と音色に
ベンは冷や汗が止まらぬ…
そして苦しそうに校舎の周りを走り続けていた
自分が校舎の門前で立ち止まる…
(そこに入っちゃいけない!!)
ベンは声を荒がい自分に叫ぶ
ギギィ〜〜〜
静かに門が開く
立ち止まった自分は誘われるように
その校舎に入っていく…