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1 異世界への旅立ち

目が覚めるとそこは暗黒の世界だった。


「こ……ここは……?」


「やぁ、やっと目が覚めたかい?随分と遅いお目覚めだねぇ」


声がした方に目を向けると碧眼に透き通るような淡い白色の髪を腰まで伸ばした美少女がニコニコと満面の笑みを浮かべながら俺を見ていた。


まるでRPGによく出てくるエルフのような端整な顔立ちで明らかに日本人ではなさそうだ。


どういう仕組かわからないがこの少女の周りだけ淡い光に包まれている。


「な、なんだアンタ!?」


おかしい、さっきまで自室のベッドでゴロゴロとソシャゲをやっていたはずだ。なのにこんな訳の分からない場所にいた覚えは一つもない。


「うんうん、何が何だか分からないって顔してるね、まぁ仕方ないか」


少女は機嫌よく右手の人差し指を俺に突き付けた。


「君にはね、異世界で救世主になってもらいまーす!どう?嬉しいでしょ」


「は、はぁ?」


我ながら間抜けな声が出てしまった。救世主?なにを言ってるんだこの少女は。何か危ない粉でも吸って頭がおかしくなったのか?


「わ、分かったぞ、これは夢だ、やけにリアルな夢なんだ」


どうせ寝オチしてこういう変な夢を見ているんだろう。俺は慌てて自分の頬を思い切りつねった。


「いでででで!?」


へ?普通に痛い。夢に痛覚なんてあるのか?


「はははっ!!面白いことするね君!夢なわけないじゃん!」


少女は腹を抱えて笑っている。う、なんだか今自分がとった行動がとても恥ずかしい事のように思えてきた……。そんなに笑わなくてもいいじゃないか……。


「よし、オーケー。分かった。百歩譲ってこれが夢じゃなくて現実だと認めるとして……。一つ聞きたいことがある」


「うん?なんだい?僕のスリーサイズが知りたいの?それはヒ・ミ・ツ!」


一瞬殺意が芽生えたがそれを強引に抑えた。こいつとは初対面だがよく分かる、これは一々ツッコミを入れてたら延々とボケてキリがないタイプだ。


「違うわ!……これ、ラノベとかでよく見る異世界召喚ってやつだよな。選ばれし勇者とかってやつ。要するに俺もその勇者ってことか?」


「いや?違うけど」


予想を斜めを通り越して垂直に行く解答に思い切りズッコケてしまった。おいおい……違うのかよ!だったら何なんだ……。


「気まぐれに君を選んだだけだよ~。別に異世界を救う人材は誰でもいいからね。君たち人間はどれも脆弱だし」


「な、なんだそりゃ……」


いや、待てよ……それだとなんでそのか弱い人間に異世界を救ってくれなんていうんだ?そんなんじゃ異世界どころか自分の身さえ守れないだろう。


「君の言いたいことことは分かるよ。じゃあここらへんで一つ説明をしとこうか」


「一つ、私の造ったアースガルドで一つの国に一人ずつ救世主候補として召喚する」


「一つ、6人の救世主候補は一人に一つずつ天性のスキルを所持できる」


「一つ、救世主候補は他の国と戦争をし、最終的に全ての国を平定したものに一つだけ願いを叶える権利を与える、以上!簡単でしょ?」


「……」


続々と新事実が出てきた。言いたいことは山ほどある、だが今一番聞きたいことは一つだけだ。


「あんたがそのアースガルドっていう異世界を造ったのかよ!?」


「私は創造神だからね。世界を一つ作るなんてお湯を沸かすくらい簡単なことさ」


なんでそんなスナック感覚のノリなんだ……。


「まぁ、私の造った異世界で色んな種族が国を治めてるんだけど、やっぱり国同士の諍いは起きちゃうんだよね~。で今色んな戦争が起きててカオスな状態になってるから、それを収めるのが君と他の救世主候補の役目ってわけ」


「その他の救世主候補ってどんなやつらなんだよ?」


「それはまた実際に会ってからのお楽しみだよ。あ、あとスキルの件だけどね。これはこっちで勝手に決めるから。ちなみに君の天性スキルは『拳闘士(モンク)』だよ。あと召喚する国もね」


「俺に異世界に行かないっていう拒否権はないのか!?」


「ないに決まってんじゃん~。そんじゃ、早速転送するから後はヨロシク!私は楽しく拝見させてもらうよ。君たちのゲームをね」


そう言うと少女は首にぶら下げていた鈴を手に持つとチリン、と涼しげな音を鳴らした。途端に俺の周りに蛍のような淡い光が徐々に湧き上がってくる。


「お、おい!俺はまだ行くって決心してないぞ!せめて心の準備をさせてくれ!」


「もう、まどろっこしいなぁ。君には異世界に召喚されるっていう選択肢しかないから諦めなよ!」


必死に抵抗しようとするが徐々に意識が薄くっていくのが感じる。ああ、マジかよ。俺、本当に異世界に行ってしまうのか?悪い夢だと誰か言ってくれ。

しかし、当然これはただの悪夢だとどこかの誰かが優しく告げてくれるはずもなく、俺は名前も知らない神様に意識を遮断された。








「―――!!」


「……―――!!」


なんだか俺の周りが騒がしい、俺を囲んでなにか怒鳴っているようだ。


「う……うう……」


「大丈夫か!?」


なんだ、これは異世界召喚ものでありがちなヒロインが起こしてくれるっていうイベントか?ああ、それだったら少しは報われるってもんだ。

俺は期待を込めて閉じていた目を開いた。さて、一体どんな属性が付いてるのかな?幼女か、それともお姉さん属性か。個人的には金髪で俺より年上がいいんだが―――。


「おお……!!ようやく目が覚めたか!!我が国の救世主(メシア)よ!!」


立派な髭を蓄えているオッサンの顔が俺の視界全部を覆っていた。


「ギャーーー!?」


「ごはぁ!?」


気が付いたら俺はオッサンの顔を殴っていた。いや、これは不可抗力だ。誰だって朝起きてオッサンが隣にいたらそりゃあ同じことするだろ。


「ふっっっざけんな!!!!!!なんでヒロインが男でしかもオッサンなんだ!!俺は老け専じゃねーし男を攻略する趣味なんかねーよ!!」


「こ、国王!?ご無事ですか!?」


「――――」


「国王―――!?」


周囲にいた西洋風の甲冑を着用した兵士のような人たちが慌ててオッサンを抱き上げていた」


あ、やべぇ、もしかしてこれ王様殴っちゃった?ど、どうしよ……。

助けを求めるように周りを見渡した。石造りの壁といい幾何学模様が綺麗に施されている箪笥や化粧台などがありまるで中世のお城にある寝室のような造りをしている。


「随分なご挨拶ですね」


その時、凛とした声が部屋中に響き周り俺はギョッとして声をした方向に目を向けるとそこには金色の髪を後ろで一つに束ね、宝石のように煌めくエメラルドの色をした眼をした少女が俺を睨みつけていた。


「我が父にいきなり無礼を働くとは……あなた、本当に救世主(メシア)様なのですか」


「……ヒ」


この少女をみてピンときた。このオッサン……国王の娘でしかも金髪。これは異世界召喚ものの定番―――。


「ヒロインキターーー!!!」


いや、異世界に召喚されるのも案外悪くないかもしれない。だってこんな可愛い娘が俺のヒロインなんだぜ?

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