2−1:レベルと称号と中谷さん
本編の続きになります。
※一部、階層の表記を訂正しました。申し訳ありません。
何だか、体に力が入らない。いや、逆か。体に力が漲りすぎてどうしたら良いのか分からないのだ。今、下手に握り拳なんか作ったら、自分の力で手の骨が粉々になりそうだ。
頭痛も凄い。これが有名なレベルアップ酔いとかいうやつなんだろうか?力が有り余りすぎて脱力感が凄いとか、初めての感覚だ。レベルが上がる時は、毎回こんな感じになるんだろうか?
こんな状態で、熊とかに出会ったらどうすれば良いのだろう?
まぁ…その危険だった熊は、今俺の枕替わりになっている訳で…。
□□□
よく分からない内に、騎士虎を討伐したようだ。崖から落ちた事で、絶命したんだろうか?
見に行くに行けないので、崖の上からソーッと覗いてみる。……うん!真っ暗で何も見えないな!!こんな所から落ちたら、あのネコ科も無事ではすまないだろう。
「はぁぁぁ……。」
何か、ドッと疲れた。
神経を使い過ぎたのかもしれないな。何だか頭痛もするし、もういっそこのまま寝てしまおうか…。
微睡みそうになった所で、側に座ってじっとしている熊に気づいた。そういえば、居たな。コイツも。通じるか分からないが、礼を言っておくべきだろうか?一応助けてくれたしな?
「なぁ…。」
「ガゥ?」
「最後、助けてくれてありがとうな。」
「グルゥ…ガルルッ!ガウガウガウ!」
うん。何を言っているかはさっぱりだ!だが『よせやい。照れるだろう!俺とお前の仲じゃねぇか!』みたいな空気を感じる。
あながち、その解釈は間違って居なかったようだ。
知らずに作り、血が滲んでいた頬の傷をぺろりと舐める熊。
…動物が飼い主の顔を舐めるのは、親愛の証だっただろうか?テレビか、本で見た事があった気がする。ありゃ犬だけだったかな?
「ガヴゥ…?」
そんな事を考えていると、不思議そうに顔を覗き込んできた。心配しているような空気を感じる。うん、中々可愛いじゃないか。
ケモナーの扉を開きそうになるな。いや、ケモナーって何なのかイマイチ解らないんだけどさ。
見た目も凶悪だと思っていたが、よくよく見ると中々可愛い方だと思う。ほら、もふもふだし?もふもふは正義っていうし?
「大丈夫だ。ちょっと疲れただけだから…。……まぁ、元はと言えばお前が悪いんだからな!?」
「ガウッ!?グルルゥ!!!」
安心させるように笑った後、出会った時を思い出したので、一応責めておく。
熊は『何ぃ!?せっかく心配してやってるのに!』みたいな顔で吠えている。
そんな様子に、思わず頬が緩む。死線を共に潜り抜けたのだ。昨日の敵は今日の友…って言葉もあるし、熊と友達になるのも悪く無いかもしれないな。
まぁ、初めて会った奴と仲間になるというのは、結構ある話だしな!!
「まぁ、そう怒るなって。俺も水に流すからさ!その代わり、もう俺の事、食べようとするなよ?それとな、お前は俺の友達だ!死線を潜り抜けた仲間だし、仲良くやろうぜ?」
「ガルッ!!」
その短い鳴き声が、肯定のように聞えたので満足気に頷いておく。
いや、一時はどうなる事かと思ったが、万事上手い事いって良かった。しかし、さっきの力は何だったのだろうか。俺、さすがに自分の3倍はある虎を投げられる程、力持ちじゃないよ?
不思議な事もあるなぁ…。なんて思いながら自分の手を見つめていると、頭上で熊が寝そべる気配があった。俺はズリズリと体をずらし、熊の腹に頭を埋める。
おお…。これは良いもふもふだ…。やはり、もふもふは正義だったんだな…。
熊も嫌がってはいない様子だったので、そのままもふもふを堪能していると…頭の中で男女とも区別がつかない声が響く。
《大鬼族:ナカタニ Lv:94が、迷宮115階層において、エリアボス【騎士虎】討伐に成功。大鬼族:ナカタニ が迷宮115階層の新エリアボスになります。それに伴い、称号を獲得。称号【挑戦者・諦めぬ者】【角大熊の親友】【武術の極】を獲得しました。》
……………は?なんて?
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
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