1章 異世界と召喚と
煌が目を覚ましたのはいつもの教室とは異なる場所だった。
「どこだここ…」
確か教室で2つめの裂け目を見て、変な爺さんを見て、紅い光を見て……そこで記憶が止まっている。
「気づいたかい?」
「うわっっ!?」
裂け目の爺さんが目の前にいた。
「いきなり召喚してすまんかった、ワシはこの世界の神じゃ」
「召喚?神?」
わからないことだらけで頭が混乱してきた。
「ここはお主のおった地球とは違う世界、グロリアスと呼ばれる世界じゃ」
「ワシはお主にこの世界を救って欲しい、いや作り直して欲しい!」
「……は?」
煌の言葉を無視し、神様は続ける。
長かったので要約すると、煌が召喚された世界「グロリアス」は500年前から魔族、獣人族、人族の大きく分けて3種族により領土争いの戦争が続いていたが、100年前に人族が地球から召喚した「勇者」と呼ばれる存在により人族の勝利で戦争は終結したらしい。
勇者達により世界は大きな争いのない世界となり、生き残った魔族、獣人族は虐げないよう法を整備し、人族を中心に繁栄していた。
しかし、勇者達の子孫が勇者達が築き上げた平和を台無しにするような人族絶対主義を掲げ、魔族と獣人族に重税を課し、奴隷化を行なったそうだ。
当然魔族、獣人族は反発。人族の中でも勇者達の考えを大切にしている者達も反発した。
勇者の子孫達は逆らう者達を王都から追放、囚獄、奴隷化、酷い場合だと処刑された者もいるらしい。
この世界を見守ってきた神様は、3種族の争いはそれぞれが目標を持ち、負けたらどうなるかを知った上で戦争していたことから手を加えず静観していたが、現在の勇者の子孫達による圧政は世界の進むべき未来でないと感じ、何とかしようとしたらしい。
しかし、強大な力を持つ勇者の子孫達は神様の力を得た魔族、獣人族、人族を返り討ちにし、手の施しようがなくなってしまった。
グロリアスには勇者の子孫達に対抗できる者がいなくなったため、異世界から神様が力を与えられる存在を探し出し、その人物にこの世界の進む先を託そうと召喚魔法でグロリアスに召喚してきたということだそうだ。
「とりあえず事情は理解したが、なぜ俺なんだ?」
煌は自分が選ばれた理由が気になり問いかけた。
「ワシにもうまくは説明できんのじゃが、ワシと合う波長の者にしか大きな力は与えられんのじゃ。グロリアスの者にも多少合う者はいたが、お主ほど波長が合う者はおらんかった。力を与えたグロリアスの者達と同じ程度ではあの勇者の子孫達には勝てん。そこで異世界を見て回り、波長の合う者を探しておったのじゃ。」
「なるほどねえ…ちなみにどれくらい俺と神様の波長は合ってるんだ?」
「なんと…100%じゃ!」
これは神様としても衝撃だったらしい。
グロリアスの者で最も高い波長の合う者が40%だったということは、確かに驚くべき適合率だろう。
「それで…この世界のために力を貸してくれるかの?」
神様が不安そうに尋ねてきた。
煌としてはそのことよりも地球へ戻りたい考えもあるが、幼い頃に親を交通事故で失い、1人で暮らしてきた煌には地球に大きな思い入れもない。
受けてもいいと思っていたが、やはり気になって聞いてみた。
「地球に帰ることはできるんですか?」
「今はワシが力を使いきっているから無理なのじゃ…すまない…」
「しかし、ワシに力が戻ればできるのじゃ!」
力が戻るのはグロリアスの世界に幸せが戻るとより早くなるらしい。
なんだか騙されているような気になるが、神様の言うことなので信じておくことにする。
「まあ、事情知ってしまった上で何もしないのは気持ち的に良くないですしいいですよ」
あまり人付き合いがなかったとは言え、割と典型的な日本人である煌は事情を知った上で断ると言うのは得意ではなかった。
「ありがとううううううう!!!」
神様は煌の手を取り何度も感謝の言葉を述べていた。
「じゃお主に勇者の子孫達に対抗する能力を1つあげるのじゃ!」
初投稿のため拙いところが多いと思いますが徐々に良くなるよう頑張ります!