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後編

「いま風呂掃除してて手が離せないの。ちょっとでてくんない?」

といわれしぶしぶ玄関のドアを開けると

「あっちゃん久しぶり〜」

とめちゃめちゃ見覚えあるやつが飛びついてきた。

俺はとっさにドアをしめたそしてチェーンをかけた。そしてそいつは頭をぶつけた。

(なんであいつがここにいるんだよ?あいつ北海道にいたんじゃなかったのかよ!! これは夢か? いや、とりあえず落ち着け、落ち着くんだ淳史。)

そして大きく深呼吸して再度ドアを開けてみる。

(あいつだ。間違いなくあいつだ・・・なんで今日はついてなさすぎなんだよ俺。なにか悪いことでもしましたか? 神様)

「ちょっとなんでチェーンしてんのかな?」

と言われ俺はまたドアを閉めた。

「いれてくれないかな? おばさんにあいさつしたいんだけど。てかなんで閉めんのよ」

「知らねーよそんなの。さっさと帰れや」

「お願いいれて」

「いやだ」

「入れてよ」

「いやだ。入れるもんならはいってみろ?まぁできねだろうけど」

「もう1度言うよ。これが最後だからね。入れてくださいお願いします」

「い〜や〜だ」

「イヤなら仕方ないわね。あっちゃん」

とそいつはちょっとドアから下がり構え始めた

「はあ〜はっ!!」

と回し蹴りで俺はドアともろともに吹っ飛ばされた。

(そうだった。こいつ空手強かったんだっけ……)

「あ〜あいれてくれなかったからこわしちゃったじゃない」

そして母親が来て

「なにようるさいわね」

「あ〜きたのね。いらっしゃい美香ちゃん」

「すいません玄関壊しちゃいました。ちゃんと弁償しますからね」

「いいのよ。あっちゃん!」

と俺を呼ぶ

「アンタのお小遣い当分ないから」

「え? なんでだよ」

と不満げに言う俺。

「あれ? こうなったのはだれのせいかな? しかも美香ちゃんに寒い思いもさせて」

「だって……」

俺は反論できなかった

「それよりなんで美香がここにいるんだよ?」

「そうだったわねいってなかったわね。今日引っ越してきたの」

美香とは磯山美香。幼なじみでよく小さい遊んでいた。小学校に上がると同時に親の転勤で北海道に引っ越したのだ。なので俺と美香は10年ぶりの再会である。

「なんでどういうこと?」

俺は頭にはてなマークが3つぐらい浮かんだ。

美香いわく父親がアメリカに転勤が決まり、当初は美香も一緒についていくつもりだったが、美香はついて行くことに猛反対して結局日本に残ることになったらしい。それで女一人じゃ心配だと父親が俺ならとこの街に行くようにいったらしい。

(またおれも偉く信頼されたもんだな)

この引越しは半年前にきまっていたらしく、ウチに1番に連絡が来たそうだ。その時俺にはこのことは絶対俺には内緒だということを伝えたらしい。なぜなら俺を驚かせたかったらしい

(こいつ)

「ところでおじさんとゆかりちゃんは?」

「ああうちのバカ亭主は今出張中でかえってくるのはあさってかな?」

「大変ですね」

「ゆかりはもうすぐ帰ってくると思うよ」

と居間にはいって話していた。ゆかりとは2つ歳が離れているおれの妹である

「どうよ? 10年ぶりのこの街は」

「なんかだいぶかわった感じですね。私がいた頃は結構畑や田んぼがあったのに、今は見渡せばマンションやビルばっかりで。私の家の周りは全く変わってないようで」

確かにこの街はだいぶかわった。特にここ5年で大きく変わった。なんだかここら辺は環境がいいようで引っ越してくる人が急増し、住める物件が追いつかない状況であった。

「そういえば、美香ちゃん前と同じでウチの隣だよね。困った時はいつでも気軽にいってきて」

「ありがとうございます」

「こなくていいよ。ていうかくんな」

「そんなこといわないの」

笑顔で俺の頭を殴っていった。

「そういえばあっちゃんって友達いるの?」

「いるよ!! そりゃ」

「昔はゆかりちゃんと私しか遊び相手いなかったもんね」

「いつの話だよ!!」

「そうそう、おままごとしてはあっちゃんが旦那役でいつも美香ちゃんに尻にしかれてたわね」

「ただいま。」

「お帰りあなた。今日給料日だったんでしょ?」

「うん」

「でいくらだったの?」

と見せる僕。

「何でこんなに安いの?」

「それは……」

「うちにはまだ3歳のゆかりがいるんだらね。しっかりしなさいよ」

5歳とは思えないこの設定。思い出すだけでぞっとした。

「あら!もうこんな時間悪いけど買い物いってきてちょうだい? 二人で」

「え? 二人で?」

「ええ、10年ぶりの再会なんだしつもる話もあるだろうから。そうだ!! 今日ウチで食べない?」

「いいですよ。そんな悪いし」

「遠慮することなわよ。その方がゆかりも喜ぶし、それにお父さんからもくれぐれもよろしくって言われてることだし」

「ならお言葉に甘えて」

ということで美香も入れての夕食になった。そして俺たちは家を出た

「ここの商店街はかわってないんだね」

「まぁな」

「今日の夕飯のメニューって何かわかる?」

「今日は確かシーフードカレーっていってたな」

「あら? 美香ちゃん?」

と声をかけてきたのは野菜屋のおばさんだった。

「おばちゃん、久しぶり」

「オシドリ夫婦の復活かい? ハハハハ」

「やめてよ、おばちゃん。ハハハハ」

「そうだよ、ニンジンと玉ねぎとキャベツちょうだい」

「あいよ。はい560円ね。それと今日入ったばかりの大根。」

「俺、言ってないよ。」

「いいっておまけだよ。美香ちゃんとあっちゃんのオシドリ夫婦の復活のお祝い。あっちゃん? 美香ちゃんを泣かせたら許さないからね」

「俺たちはそんなんじゃないんだよ?おばちゃん」

と誤解されたまま店を後にした

「荷物よろしく」

「ちょっと待てよ。たく自分勝手なとこは変わってないだから」

そして魚屋にいき

「あれ? 美香ちゃんじゃねえの? 戻って来たんや?」

「ええ、ついさっき」

「そうなんや。へ〜淳史くん?」

「なに?」

「嬉しかろう?」

「なんで?」

「だってお嫁さんが帰ってきたんよ」

「おじちゃん?お嫁さんって……」

「美香ちゃんは淳史くんのお嫁さんじゃなかとな?」

「違います!!」

「あなた? そんなじゃなかたい」

「淳史くんの奥さんたい、奥さん」

「あ〜奥さんか奥さん」

「なんでそう飛躍させるわけ?」

「ハハハ冗談よ、冗談」

「でもホントに奥さんにするっちゃろ? 淳史くん?」

「ホントなの? あっちゃん」

と顔を赤くする美香。

「なに真に受けてんだよ」

「え〜とアサリとイカとエビね」

「はいよ、860円ね」

「なにこれ?」

渡された袋のなかにトロの部分がはいっていた

「ちょっとおじちゃん? いいの?」

「よか、よか。美香ちゃんが戻ってきたおまけ」

他にも

「あら!美香ちゃん、大きくなったわね。これ持っていって」

「久しぶりのツーショットだね」

「よし!! よりを戻した2人にごほうび」

とたくさんいろんなものをもらった

「私ってそんなに人気ものなの?」

「バ〜カなわけねえだろ?」

小さい頃よく2人で商店街にいってはいろいろともらったものだ。美香が引っ越してからはもっぱら少なくなったが




「よし、これで全部だな。帰るか」

「ちょっと待って行きたい所があるの」

「どこに行くんだ?」

「いいから、いいから」

と言って落ち着きのない子供のような美香。

そんな美香にちょっと困惑した笑みでついていく俺。

(たくっしょうがねえな)

家を通り過ぎ、見覚えのアル道を歩いていく。

(この道って……でここを右に曲がると)

そこには懐かしい光景があった。

「この公園って……」

「覚えてる? この公園」

「ああ。この砂場でやってたな、おままごと」

「うん、そうだね」

「いつも俺がシリに叱れた場所」

俺にとっては悪い思い出しか思い出さない場所である

しかし美香にとっては

「よく言うわよ」

「だってホントのことだろ?」

「懐かしいな、本当に。ねぇ覚えてる?」

「なんだよ?」

「私がいじめられていると」

10年前

「ねぇねぇ美香ちゃん? 今日は何色のパンツはいてんの?」

と近所の悪がきたちがいつも美香をいじめていた。

「何言ってるの?」

「そ〜れ〜」

とスカートをめくられ泣き出した美香

「わ〜ピンクだ」

「お前ら!! 女の子をいじめてそんなに楽しいか!!!? たくっこりねやつらだな」

といつもその悪がきたちとケンカして毎度のごとく勝利。

「覚えとけよ〜」

とありきたりの悪役のセリフを言って去っていく

「大丈夫か? けがねーか?」

「うん。ありがとう助けに来てくれてホントに嬉しかったよ。」

と満面の笑みを浮かべる。

「バ〜カ。勘違いすんなよ!! 偶然通りかかったから来ただけだ。決して心配で走ってきたわけじゃないからな」

(あっちゃんたら)

「……ってな感じでいつも私を助けてくれた。私の大切な場所なの」

(そっか美香にとっては)

「あ〜寒い!! 帰るか」

「そうだね。帰ったらおばさんのカレーだ」




「ただいま」

「お帰り」

「あ〜美香お姉ちゃんだ」

とゆかりが抱きついた。

「ちょっとゆかりちゃん?」

「コラゆかり?」

と俺はゆかりを離した。

「ありがとう、これで完成できるわ。もうすぐできるから美香ちゃんは座ってて」

「ありがとうございます」

「俺は?」

「アンタは手伝い」

買ってきた中から必要な物を入れて完成した。

「いただきま〜す」

とみんな食べ始めた。

「おいし〜です。」

「ありがとう、そう言ってもらえてうれしいわ」

「お姉ちゃん? 私ね……」

話が盛り上がる食卓。

「なに一人黙って食べてんのよ!」

「何? 美香お姉ちゃんと久々に食べて緊張してるとか?」

「ちげ〜よ」

「どう? 10年振りの美香ちゃんとの食事」

「どうもねえよ」

「なに照れてるの? あっちゃん」

「照れてねえって別に」

「美香ちゃん?あっちゃんね美香ちゃんが引っ越してから1週間ぐらいずっとひきこもってでてこなかっただから。出てきた時は目が真っ赤でね」

「そうなんですか?」

「そうだったの、お兄ちゃん」

俺は恥ずかしがって

「またそんなこという。一番親しい友人がいなくなったんだから当然だろ?」

「それに小さい頃よく『僕ね、美香ちゃんと結婚するんだ』って言ってたのよ」

「そうなんだ」

「そんな昔のこと覚えてねえよ。それに今はなんも思ってないの」

「へ〜? ならこれはなにかな?」

「いつの間に?!! 返せ」

「はい、美香ちゃん」

「なに渡してんだよ!!」

美香は思い出したように

(これは……ふんっこんなんまだ持ってたんだ?)

それは俺の家族と美香の家族で川でキャンプをした時に美香が川で転んで倒れてる写真。

美香は嬉しさでいっぱいだった。

「勘違いすんなよ?これがおもしろかったから取っといただけだ」

「なこと言っちゃって素直じゃないんだから」

「うるせー」

食べ終わり、美香は家に帰った。帰り際

「またお隣同士よろしくね」

「おう」

と懐かしい笑顔で出て行った。

俺はその笑顔にドキッとした。

こうして俺の誕生日は終わった。

俺の今年の誕生日プレゼントは後にも先にもない最高のプレゼントだった。



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