見学会 前編
―皆さんは召喚士という職業を知っているだろうか。そう、サモナーとも言うあれだ。
―となると、サモナーがどんな仕事をするのかも考えやすいだろう。
―モフモフの可愛い猫型召喚獣から、ユニコーンのようなレアな幻獣まで契約したモンスターなら自分の近くに召喚して使役する。
―人の比じゃない強さで助けてくれるとても役に立つ存在だ。
―ではここで問題だが、君たちは転移…ワープは使った事があるだろう?
―ワープの特徴として、難易度の高いダンジョンから出る時程魔力を多く消費する。また、自分以外をワープさせるにも多く消費する。
―スライムなどそこら辺の草原にいるようなモンスターならばちょっとの魔力ですむが、ユニコーンや古代竜などハイレベルなダンジョンから呼び出すのには想像以上に魔力を消費するのではないか?
―だが、現実はそうじゃない。だってそうだろう?雑魚を出そうが、幻獣出そうが、変わる値は多くてほんの2・3ケタ。スライムとドラゴンの差がそれでは釣り合わないと思わないかい?
―まあ、召喚する身になってみるとそっちの方が良いんだけどね。
―実はそんな曖昧な差で全てのサモナーを支えている存在がある。とんでもない程の影響を及ぼしながらも、その存在は闇に隠されたまま。
―キミはそんな存在気になるかい?
―…ふふっ、どう答えても見せるんだけどね。
―さあ、あっちを見てごらん!ああ、そっちじゃない、こっちこっち!ほら、あそこの山の麓にこぢんまりと佇むあの建―…。
――ドォォォォンッ!!!
―…物があった所だよ。うん、場所を変えようか。施設はいろんな所にあるから、一つ吹き飛んでも問題ないよ。
―うーん、爆発してたら時間がなくなってしまったな。しょうがない、ぱっぱとキミをワープさせるとしよう。
え?ボク?ボクはここまで。大丈夫だよ、話は通してある。じゃ、またどこかで逢えるといいね。バイバイ!
* * *
眩しい光が弱まり目を開いてみると、渓谷にひっそりと建つ建物の目の前に立っていた。
「ん?見学者というのは君か?」
ちょうど建物の中から出てきた人に声をかけられた。
質問に答える為、首を縦に振るとその男の人は自己紹介を始めた。
「俺は今日君の担当をするグトウェルだ。よろしく。では、早速だが見学を始めよう」
グトウェルと名乗る彼は建物の中に移動を始めた。
建物の中は外見からは想像もできないくらい広かった。ツルツルに磨かれた床。丁寧な模様で彩られた照明。
そして、なんと言っても目にとまるのは壁に所狭しと並ぶドアの数だ。各ドアにはプレートがついており、番号で管理されているようだ。
「はっはっは。驚いたかい?外とは全然違うもんな。ここは全て空間魔法で調整していて、中は自由に変えられるんだ。他の営業所もそうだから、他の営業所のデザインを真似するってのも流行ってるらしいぜ」
グトウェルはそう言って時計を見た後に
「じゃあ、時間も無いことだし説明を始めるぞ。ここは召喚獣派遣所という場所だ。全てのサモナーをサポートするための施設で、具体的にはサモナーの魔力消費を少なくしている。
どうするのかって?それはな、サモナーから遠く離れた場所にいるモンスターを転送する中継所として様々な所にこの施設を置いておく。必要になったら、1番近い中継所から召喚する。そうする事で大幅にサモナーの負担は減るだろ?
言っても分かりずらいな、現場に行って説明するか」
そう言うとグトウェルは45と書かれた扉に向かった。
「ちょうどよく召喚の申請があった、どうやっているのか説明しながら見ていくとしよう」
彼が勢いよくドアを開くとそこに広がっていたのは沢山の木々達だった。
「今回の申請はユニコーンなんだ。ユニコーンが縄張りとしているこの森は全てユニコーンによって守られている。そのユニコーンが召喚されたらどうなると思う?
この森を守るのは誰なんだろうな?
さあ、着いたぞ。もう部下たちが転移陣を用意し始めている。あの転移陣はちょっと特殊でな、転移した物を小さくするんだ。そうする事で事務所の中を簡単に移動できるだろ?」
転移陣に乗ったユニコーンは光に飲まれながら消えていった。
「ユニコーンがこの森から居なくなると奪おうとする輩が現れる。そいつらからこの土地を守るのも俺らの仕事なんだよ。仕事が終わってしまう前に次に行くとしようか」
グトウェルはそう言うとさっき入ってきたドアに戻っていった。




