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別れ

「フォルトゥナ。幸運を司る神……………運命を司る舵を持っていて定まることのない運命を象徴する球体を操り、溢れることのない幸運を受けることの出来る壺を持つと言われた神様よ。君にはその神がいるようね。」

「なんで…………俺に?」


そうこの不運の象徴でしかないこの俺に。

コンジュラーのところから出てきた二人は改めてマコトのことについて話していた。

先ほどまでいつも通り何か違う様子に見えたイリスも少し落ち着いたようだ。


「理由は色々よ。神の生まれ変わりだったり、前世の行いの結果輪廻転生の際に力を授かったりとかそういう話は聞いたことがある。でも実物は初めて。」

「生まれ変わり…………前世の行い…………」


マコトは前世の記憶なんてものは勿論もち会わせてはいなかったが一つだけ確証のある心当たりがあった。


「やっぱり、あれだよな…………」


そう。マコトをこの世界に呼んだあの老紳士。

あの時あいつは言った『君の欲しいものを一つだけ与える』と。

そこで俺は望んだ。運を。


「その結果がこれなのか?」


思い返せばそうだ。

この世界に来たのは俺が望んだから。

狼に追いかけられても怪我一つない。

偶々出会ったイリスが何でも助けてくれる。

そう。その時々は不運だと自分では思い込んでいたが今思い返せば全てが自分の方に好転している。


「しかし、それで何で『無適正』なんだ?」


これだけの運の持ち主だ。

きっと何かあるはずだ。


「…………それは力が強すぎるから。強すぎる力は全てのバランスを崩すわ。だから適正ではない。故の無適正。」

「じゃあ、どうしろってんだよ。」

「…………それは……それこそは君が……マコトが決めること。」


イリスが先ほどとは違う低い声で話す。

やはりコンジュラーの話を聞いてから少し何だかおかしい。

しかし今はそれどころじゃない。


「俺が……って突然……言われても。」


無理だ。自分の突然言われた力なんてどう信じればいいのか分からない。

しかも一人で。


「な、なあイリス。イリスは俺のこの力どう思う?」


思わずイリスの参考を求めてしまう。


「…………」

「イリス?」


聞こえてないのか反応がない。


「なあ、イリスってば!」

「…………君はそうやって他人にばかり自分の人生を任せるんだね。」

「?どうしたんだ急に?」


イリスの押し殺したような声にマコトは思わず聞き返したがこの声はさっきも聞いた。

マコトにフォルトゥナの力があると知ったときの声だ。


「君は何から何まで結局は他人頼り運を司る力を持ちながら……」

「だってしょうがないだろ!俺だってこんな力を突然持たせられて…………」

「困るって言うの!?そんな偉大な力を持って。」

「…………」


マコトの言葉を途中で遮る怒気を含んだイリスの言葉に思わずマコトは怯んでしまった。

困っている訳ではない。

困惑しているのだ。今まで不運で生きてきた者が突然180度反対の性質になる。

そんなの想像だにしない事象だ。


「おっ…………俺は……」


しかしマコトには言い返すことは出来なかった。

それほどマコトを見つめるイリスの目には力があった。

まるでお前は理不尽を振りましているに過ぎないと言わんばかりの目だった。


「…………ごめん。言い過ぎたわ。」


明らかに怯えにも近いマコトの様子にイリスは自分がやり過ぎたのに気がついた。


「いや、イリスの言う通りだ俺も頼り過ぎたよ。」


お互いにそうは言いつつも場の空気は完全に悪くなっていた。

マコトはなんとか言葉を探そうとしたが如何せんこういうのは得意ではない。

二人の間には沈黙が流れた。


〈パン!〉


突然大きな音がなりマコトは思わず音の方を見た。

するとその先にではイリスが両手で自分の頬を叩いていた。


「イリス?」

「うん。今日は疲れたみたいだから宿屋に行くよ。」

「そうか。」

「マコトは?どうするの?」

「…………俺もそうするよ。」

「じゃあここでお別れね。宿屋はすぐそこよ。君の所持金なら十分よ。」


イリスの指差した先にはそれらしき建物があった。


「イリスは?」

「私は他を借りてるの。君のようにお金持ちじやまないから。それじゃあね。楽しかったわ。」

「こちらこそ、色々ありがとう。助かったよ。」


そう言ってイリスは向きを変えて行ってしまった。

欲を言えばまだ話したかったし助けを欲しかった。

でも、さっきの一言が刺さり心から抜けなかった。

マコトは後ろ姿を見ながらもこれからを一人になる不安を押し殺して宿屋へ向かった。



『最悪ね。私…………』



新年もよろしくお願いします。

更新が遅れてこんな時間に。

今夜のいつも通り深夜更新出来るように頑張ります。

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