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コンジュラー

「ここがコンジュラーのいる場所よ。ここでマコトの運命が決まるといっても過言ではないわ。」

「……やっとか。」


服屋から聞いた両替商からしっかりと両替を済ませた二人はようやくコンジュラーの元へと到着した。

この国はここで職業を授からないと仕事すら出来ないというルールというか定めがある。

マコトはここにいる以上はまず適正を知りこれからを決めなければならなかった。


「……やっとかーって何よ?」

「ここは最初の話だと比較的早い段階で来る場所だったはずだよね?なのに何故こんなに俺ははへとへとな訳?」


マコトの思わずの一言にマコトの真似からツッコミを入れるイリスにマコトは素直に現状を尋ねた。

マコト本人はこの後ボロボロにされるのは分かっていたのだが異世界に飛ばされ慣れない女の子に引っ張り回され続け愚痴の一言でも言いたい所だった。

その結果…………


「じゃあ、マコト様は一人で狼を全て倒し、お金も工面してここまで来れたと?」

「…………いえ、イリス様のお陰で御座います。」


ほらね。


「分かればよろしい♪じゃあ行くわよ。」

「えっ?イリスも着いてくるの?」

「当たり前でしょ。ここまで一緒なんだから結果も見せてよ。マコトの適正職業も気になるし。」

「……分かったよ。」


この数時間というか会った瞬間から立場関係が決まってしまった二人だがマコトはなんだかんだ悪い気はしていなかった。

イリスが可愛いと言うのもあるがマコトはイリスには自分に無いものが溢れているように思えた。

行動力、知力、剣技、勇気言い表せば色々ある。

一種の憧れにも似た感情だったのかもしれない。

しかし、まだ若いマコトにはそれが何か分かっていなかった。

ただ

一つ分かることはイリスは自分よりずっと凄くてイリスに任せれば上手くいくということだ。


「何見てるの?」

「え?」

「私の顔に何か着いてる?」


イリスが不思議がって顔のあちこちを手で触り確認する。

マコトは思わずイリスの顔をじっと見とれていたのだ。


「……ああ、ごめん。ぼーっとしててさ。」

「大丈夫?しっかりしなよ。」

「ああ。早く行こうぜ。」


マコトはその事実に顔から火が出るほど恥ずかしくなり誤魔化した。

何とかバレてはいないようだ。

そしてマコトはいよいよ運命の選択に身を委ねることになった。

マコトは一つだけ思っていたことがある。

それは自分がここに来た理由だ。

原因は間違いないあの老人だ。

しかし、何故俺なのか?

あの日あの場所に偶々いたから?それとも…………

それと一つだけはっきり覚えていることがある。

『君の欲しいものを一つだけ与える』

それが一体何なのかだ。

マコトはあの時確かに望んだ『運』を。

たがしかしそんなものをどうやって…………


「…………マコト。」


「……マコト。」


「おい、マコト!」

「いて、何だよ。」

「それはこっちのセリフ!さっきからぼーっとしちゃって。何回も呼んだのに。」

「ああ、ごめん。考えごとしてた。」


イリスに頭をポコッと叩かれた。

完全に気を取られていたのだ。


「本当に大丈夫?もしかして…………びびってんの?」

「違うよ。違うけど……」

「けど?」

「これで俺の今後の身の振り方が決まるとなると感慨もひとしおって感じでさ。」

「……まあ、気楽にいきなよ。」

「え?」

「力んだっていい結果は出ないんだからさ。いざとなったら私もいるし。」

「確かに。そうかもね。」

「そうよ。」


本当に凄い奴だと改めてマコトは思った。

イリスのお陰で思えた。

全ては結果の後で考えようと。


「で?どうするの?」


大きなエントランスのような場所に出たところでマコトは尋ねた。


「まずはカウンターで申し込んで順番待ち。その後に呼ばれたらコンジュラーに会えるって流れ。」

「俺、オレアノ文字書けないけど大丈夫?」

「大丈夫よ。受付の人が書くから。それに文字の読み書きの出来ない人なんてざらよ。」

「そうなの?」

「ええ。残念だけどね。村によっては村人のほとんどがそうって所もあるわ。」

「…………そうなんだ。」


日本でも地域格差みたいなことはあるとテレビで見たがそれと同じようなものだろうか。


「昔はもっと全体的に豊かだったんだけどね……」

「何かあったの?」

「ちょっと国がもめてね。それより早く受付してきてよ。時間掛かるでしょ。」

「うわっ、了解。」


マコトは急いで受付を済ませ順番を待った。

少し待つと順番が来て二人は個室のような部屋に案内された。

何だか手相占いにカップル二人で来ましたみたいな場所でマコトは恥ずかしかった。

なにしろ本当に女の子と来ているのだから。

しかし、イリスはそんな気はさらさらないらしく


「私の時はもっと広い部屋にコンジュラーと二人きりだったなー」


と不思議がって辺りを見ていた。


「ではマコト始めよう。」


二人が座ると正面のカーテンが開き中から全身をローブで覆った人が出てきて声をかけてきた。

そこには網があり奥のコンジュラーには指一本触れられなくなっている。

しかもそのコンジュラーは性別も年代も今二人がいる場所からでは一切分からない。


「はい。」


マコトに一瞬にして緊張が走った。


「では、目を瞑って心を落ち着かせて下さい。」

「はい。」


マコトは静かに目を瞑って一つ深呼吸をした。

そのまま1分、2分と過ぎた。


「目を開けてよい。」

「はい。」


マコトは静かに目を開けた。

そしてコンジュラーは言った。


「お前は『無適正(アンエスクエラ)』である。」

「?何ですそのアンエスクエラとは?」


知らない単語に思わずマコトは問い返した。

しかし、コンジュラーは答えてはくれなかった。


「…………アンエスクエラ……無適正者。出来る職業はないってことよ。」


横にいたイリスがか細く小さな声で答えた。


「無適正者って…………何だよ!それ!」

「出来る職業がないんだもの。ほとんどが浮浪者や奴隷に染まるわ……」

「…………そんなのって。」


ここまで不運は付きまとい俺に容赦ないのか。

マコトは愕然とした。

しかしその時、


「…………『無適正(アンエスクエラ)』だがそれはお前がフォルトゥナであるが故にどの職業にも適さない。しかし運命は残酷なり。」


そういうとカーテンはピシャッと閉まってしまった。


「どういうことだ?」


マコトにはさっぱりだった。

すかさずイリスに聞こうとした。


「なあ、イリス…………これって……イリス?」


横のイリスを見ると先ほどまでと明らかに様子が違った。

今までに見たことない位に顔はこわばっていた。


「イリス?…………イリス!」

「あっ、ああマコト、…………君凄いじゃない。フォルトゥナの力があるなんて。」

「何なんだフォルトゥナって?」


その質問にイリスは俺の目を一切見ることなくカーテンをじっと見つめ答えた。


「フォルトゥナ。それは幸運を司る神よ。」

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