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イリス

そこには一人の女の子が立っていた。

髪の毛は緋色で長く上半身は銀色の鎧を着ていた。

下半身は白いスカートでスラッと伸びた長い足が目立っていた。

そしてその右手には女性には不釣り合いにしか見えない長身の剣が握られていた。


「……助かった。ありが……うおっ!」


マコトは周りを見て驚いた。

先程,正に飛びかかってきた二匹の狼が側で絶命したいたのだ。

綺麗に喉元だけをえぐられているのだった。


「えーっと。マジか?」

「えっと。怪我はなさそうだね。立てる?」

「うん。ありがとう。」


女の子に手を貸して貰い立ち服の土を払った。

近くで見るとかなりの美人だった。

青い瞳は吸い込まれそうな程に魅力的だった。


「改めてありがとう助かったよ。」

「ううん。礼には及ばないよ。私も依頼が完遂してなによりだったからね。」

「依頼?」


猛獣ハンターか何かだろうか?でも、あの格好で?マコトは半信半疑だった。

しかし、コスプレにしては本格的すぎるし何より目に前に死体が転がっていたからだ。


「まーね。さっきのの討伐は街の依頼だったんだけど…………まあ、私だからサクッと集まってサクッと解決かと思ったんだけど…………それより君は?どうしてこんな所に?あとその服装……」

「服装?これは普通の学ランだけど…………いやそうだよ!それより俺変なじいさんに話したら気を失って気がついたらここにいて…………そういえばここどこ?」

「…………?言ってることはよく分かんないけど、どこか別の所から来たのは分かった。ここはドス領のナチャーロっていう所よ。」

「ドス領ナチャーロ?」


全く聞いたことのない名前だった。

少なくとも日本ではない。

外国のどこかだろうか?それとも自分の勉強不足かと頭をひねった。


「ねえ?聞きたいんだけどもここって日本からどれくらい?」

「ニホン?何それ?それ君の国?聞いたことないなあ。」


日本を知らない?

日本はかなりの先進国だと思っていたが案外認知度が低いのだろうか?


「じゃ、じゃあさ、どこか電波入るとこ知らない?ここ圏外でさ。スマホさえ使えれば連絡も取れるし。」

「電波?圏外?スマホ?うーん。分かんないなあ。とりあえず近くの村まで行く?そこまで行けば何か分かるかもしれないし。案内してあげる。」

「…………うん。」


まさか、こんな若い女の子がスマホを知らないとはどういうことだ?

悪い夢でもみてるんじゃないか?

発展途上国でさえ携帯電話は普及してきてるぞ。

いよいよ、ヤバい予感がしてきたマコトだったがどうしようもないのは変わらないので彼女の提案に従うことにした。


「大丈夫?まあ村まで行けばなんとかなるよ。私、イリス。よろしくね。」

「ああ、よろしく。俺はマコト。コウノマコトだ。」

「コウノマコト?変わった名前ね。じゃあ行きましょ。」

「ああ。」


イリス名乗った女の子はそう言ってマコトが進もうとした方向に歩き始めた。

ここまで来て分かったことはもっと情報を集める必要があることとあの狼にさえ会わなければ真っ直ぐ村へ進むことが出来たという事実だった。


「なあ、イリスさん、悪いんだが幾つか聞いていいか?」

「イリスでいいわよ。歳も同じくらいでしょ?」

「分かった。ここはドス領って言ってたけどどんなとこなんだ?」

「ドス領はヴェスタ公国を4つに分ける領の一つ。ナチャーロはそのドス領のはじっこにある小さな村よ。」

「なるほど。」


また聞いたことのない地名だった。


「じゃあイリスはさっき依頼であの狼を狩ってるって言ってたけどその村のハンターか何かなのか?」

「違うわ。集会所の依頼よ。」

「集会所?」

「それも知らないの?集会所は色んな所からの仕事依頼を纏めてるところ。私はそこで依頼をこなして旅のお金を貰ってるの。因みに私は今日たまたまここに立ち寄っただけ。」

「そうなのか…………」


そんな仕事のシステム聞いたことない。

ハローワーク的なものかと思ったがそれで狼狩りなんて考えにくかった。

そんなギルド的な仕事の扱いなんてマンガやゲームの世界でしか…………


「まさか…………なあ、イリス今って何年の何月だ?」

「何よ突然?」

「いいから!」

「分かったわよ。えーと、カンタード520年の8の月よ。」

「…………マジか。」


にわかには信じがたいがここまで来るとその可能性が濃厚だ。

これはいわゆる異世界転移ってやつかもしれない。

そうすれば全てが合致する。

知らない土地、年号。知られていない日本、スマホ、全てが。


「どうしたの?大丈夫?」

「ああ。大丈夫だ。こういうのには慣れてるはずなんだが今回は規模が大きすぎてびっくりしただけだ。」


こうなると恐らくこの異世界転移はあの時のじいさんの仕業に違いないそれしか説明がつかなかった。

もう己れの不運は極みまできたのかもしれない。


「とうとうここまできたか。すげーな。俺。」

「?どーしたの?」

「いや、独り言。」

「ふーん。変なの。ほら、村だよ。」


イリスの指差した先には確かに村があった。

そこまで大きくはないが木の塀に周りをぐるっと一周囲まれたところだった。

門の前まで来ると上の方に何か書いてあった。


「これは?文字?」

「読めないの?オレアノ文字だよ。」

「へえー。記念に写メっとこ。」


異世界転移したとい現実に高揚していたのかマコトはスマホでオレアノ文字を写真で撮り始めた。


「ちょっと、その板で何してんの?」

「ん?写真撮ってんの。ってわかんねーか。ほら。」

「うわっ!すごーい!空間を切り取ってる!」


論より証拠とマコトは写真をイリスに見せた。

イリスの想像通りのリアクションと食い付きに気分が良かった。


「ねえ、もしかしてマコトはアデプト職?」

「アデプト職?なんだそれ?」

「本当に何も知らないんだね。このヴェスタではコンジュラーっていう判断師の占いでなる職業が決まるんだよ。そして、アデプトは魔法を司る職業。」

「そうなのか?全然知らなかった。」

「じゃあマコトも視てもらわないとね。そうしないと仕事も探せないし。」

「そうなのか。それならいかないと。じゃあイリスはナイトとかなのか?あれだけの剣技だし。」


見えてないけど。


「…………私は…………まあ、そんな感じ。ほら、早く行くよ。やることは多いよ。せっかくここまで一緒だから案内してあげるよ。」


そう言うとイリスはマコトの腕を掴み村の中に引っ張っていった。



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