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No.1商人

コルツは二人をクルス商会に案内した。

そこはあの日二人がお札を金貨に変えたあの場所と同じ応接室のような所だった。


「…………で?私達をここに連れてきたのは何故?」


部屋に入って早々イリスが切り出した。

部屋には現在マコト、イリス、コルツの三人のみであった。

コルツはイリスの言葉を受けても最初と同じ落ち着いた態度でこちらに話しかけてきた。


「まあ、焦らずにどうぞまずは座ってから話しましょう。」


そう言って二人をソファーに座るようにコルツは促した。


「イリス、コルツさんの言う通りだ。とりあえず落ち着こう。」

「うん…………」


マコトも同意けんだったようで先手をついていったイリスを一旦落ち着かせた。

イリスはしぶしぶではあったが素直に言われたことに従いソファーに座ることにした。

二人が腰を落とすとコルツも向かい側のソファーに座った。


「で?改めて伺います。何故俺達を?」


今度はマコトがコルツに聞いた。

別に二人で作戦立てた訳ではないが自然とそうなっていた。


「先ほど言ったかと思いますが?お二人と話がしたかったと…………」

「何のために?さっきの話からするとこのクルス商会とあの盗賊団が関係があったとか。それについてですか?」

「…………もしくはあの盗賊団が狙っていたのがこことか。」


マコトがせっかく話をオブラートに包んで話したのにイリスはそのオブラートを破いてしまった。

しかし本当のところマコトもそうだろうと予想していた。


「…………流石に鋭いですな。その通りです。今朝がたあなた方が捕らえた盗賊団が狙っていたのがこのクルス商会であると分かりました。」

「…………そうですか。それは分かりました。ですが俺達とそれの何が関係あるんですか?」


イリスは珍しく無言に徹していた。

普段なら先方に出ていくのだ今回はマコトに任せていた。

コルツの方は表情を変えず何を考えているのか捉えにくかった。

やはりNo.1の商会はのトップという貫禄を見せていた。


「知ってますか?商売において何が大事か?」

「?何の話ですか?」


マコトはコルツの話が見えなかった。

しかし、それに反応を見てもコルツはそのまま話を続けた。


「何処でどんな物が必要なのか?何処でこれから何が起ころうとしているのか?それを見極める事が大事だと私は思ってます。どんな所でも必要な物は売れますからね。」

「…………だからそれが一体?」


マコトにはまだ見えていなかった。

だが隣にいたイリスにはコルツの言わんとしている事が見えたいた。


「…………情報ね。」

「え?」

「さっきコルツさんが言ってたのは全て情報戦の話。他より先に情報を得られれば先に動ける。他を出し抜く事が出来るのよ。」


それはイリスにも言われていた話だった。

分野は違えど情報はお金をかけても集めろと言うイリスと同じ考え方だった。


「どうやら、そちらの女性にの方には分かって頂けたようですね。その通りです。私は情報を最も大事に考えてこの商会を大きくしました。情報は全てを有利に働かせます。」


コルツは淡々と持論を展開していった。

マコトはその話をただ聞くだけだった。

マコトには話が逸れているのではないかと思うほどだった。


「勿論このナチューロの中でもです。至るところに情報網を張り巡らせています。」

「…………」


マコトはここでようやく合点がいった。


「聞いてたんですね。俺とイリスな会話を…………」

「…………聞いていたのは私ではないがね。」

「じゃあ…………」

「部下ってところかしら。」


イリスが口を挟んだ。

しかし彼女の指摘は的確であった。

今の彼女はそれほど鋭かった。


「まあ、偶然ですがね。」


コルツはそう言ったがそれも大分怪しい話ではあった。

が、マコトは敢えてそこはつっこまなかった。

コルツは更に話を続けた。


「そこでたまたま何やら盗賊団に関係がありそうな事を言っておられたので、こちらまで来て貰ったんですよ。」


どうやら二人の会話はしっかりと伝えられていたようだった。

しかし肝心なところが少し違っていた。


「確かに俺とイリスはあの盗賊団の話を聞いていて引っ掛かる点がありました。だから、詰所まで行って調べようとしたんです。ですがあくまで可能性の話です。確証はありませんでした。正直無駄足の可能性の方が高いのにどうしてここまで?」


この人は情報を元に計算をして行動を取っている。

恐らく確証がない情報は確証を得るかそれに値するまで精査するそういうタイプの人に違いないとマコトは思った。

だからこそ、この確証のない二人の会話に食いついたのが引っ掛かったのだ。


「確かにそうですな。私も確証がない中でしたらただの一つの会話として報告を聞き流していたでしょう。しかし、もう一つ気になることがありましてな。」

「もう一つ気になること?」

「それはこれです。」


そういうとコルツは懐から一枚の紙を出した。

それは二人がよく知っている物だった。


「それは…………1000円札……」

「…………やはり絵画ではないようですな。」

「ぐっ、しまった。」

「…………バカ。」


マコトは緊張感の余り思わずお札を絵画というのを忘れてしまっていた。

気付いた時にはもう遅くイリスにも呆れられてしまった。


「まあ、いいではありませんか。正直で。実のところあの時対応したペイトも絵画ではないのではとその時から疑っておりました。」

「…………そうだったのか。全然分からなかった。」

「…………私も。」


二人共にペイトが絵画と信じきっていると思ったがそれは彼の演技に騙されていたのだった。

特にイリスの方は見破れなかったのが悔しかったのかちょっとへこんでいた。


「彼も優秀な商人だということです。」


コルツはそうさらっと言ってのけた。

そしてお札をテーブルに丁寧に置いた。


「これの素晴らしさはそこではありません。この紙に秘められた技術です。」

「技術って透かしとかのことか?」

「そうです。この技術を習得出来れば富を産み出せると考えたのです。」


マコトはそれを聞いてそれは無理だと思った。

何故ならばそれはマコトの元いた世界日本の最高の技術だからだ。

この世界の文明レベルでは到底作ることは出来ない。


「そして…………私達はそれを売り文句にしたんです。」

「え?売り文句?自分達で研究するんじゃなくて?」

「無理だと分かったんだね。今のヴェスタ公国では。」


コルツの考えはマコトを越えていた。

コルツは無理だと判断したのだった。

今のヴェスタ公国ではこの技術は盗めないだからその高い技術を研究出来ますと敢えて言って購買意欲を高めたのだった。


「ええ。二枚はすぐに高値で売れました。金貨10枚は安い買い物でした。残りがこの一枚です。」

「まさか、そっちに渡ってから2日3日でそんな高値で売れたのか?」

「ええ、クルス商会は情報集めるだけでなく発信もするんです。時には自分達の都合の良いように。クルス商会では技術解析出来ずにもてあましてるとね。そうしたらすぐに来ましたよ。彼らも新しい技術は欲しいですからね。私は一枚を残し競売にかけました。結果は言った通りです。」


マコトは冷や汗が出るのを感じた。

ヤバいやつが前にいるのではとこっちが思い付かない事をズバズバと実行していた。

流石のトップ商会のトップだった。


「で?それと今回の盗賊団と何の関係が?ただの貴方のもうけ話にしか聞こえないけど。」


ここでイリスが動いた。

マコトでは厳しいと判断した訳でいようだがマコトと入れ替わった形となった。


「まあ、焦らずに。ここからです。あの盗賊団がこの商会を狙っているというのは話しましたが実はこれを狙っていたらしいのです。」

「お札を?」

「ええ。盗賊団の一人が言ったので間違いありません。珍しい物なので当然かと思いましたが気になることがありまして。」

「気になること?」

「はい。その男がこう言ったんです。『変化を観察するその為に盗め』と。繰り返し繰り返し。暗示のように。」

「…………観察する」


イリスとマコトは思わず顔を見合わせた。

ここでそのキーワードが出てくるとは二人は思いもしていなかった。


「一人だけなの?それを言うのは?」

「はい。そうなんです。他の者はほとんど記憶がないのですが、一人その男だけはそれだけを繰り返すのです。だから耳に残りまして。そうしたらあなた方も気になる発言をしたというので何かあるのではと思い招きました。」


コルツの言う気になる発言とは恐らく『緋色の観察者』という老紳士の言葉を聞いたことだろうとマコトは思った。

確かに2つ3つと重なると多少薄くても信憑性は増してくる。


「で?コルツさんは私達に何をして欲しいの?」


ここでイリスが単刀直入に聞いた。

コルツは突然のストレート攻撃に少し驚いた顔をしたがやがて笑いだした。


「はっは。話が早くて助かります。では私も単刀直入に申し上げます。この事件の黒幕を探して欲しいのです。恐らくこれは利害が一致するでしょう。」

「…………そうね。」


確かに一致する。要は盗賊団のボスなるローブの男を探せという話だ。

これにはマコトとイリスもお互いに見合い頷いた。


「ええ。いいわ。クルス商会は狙っている敵の壊滅を目的。私達はローブの男を探すのが目的。目的は違えど完遂すれば結果は一緒ね。」

「ええ。ご決断が早くて助かります。物資と資金はクルス商会で出します。お願いします。」


イリスの決断にコルツは頭を下げた。

しかも援助もしてくれるとは中々至れり尽くせりと言ったところだ。


「でも、何処を探せばいいんですか?」


マコトが率直な疑問を投げ掛けた。

要は敵のアジトだが二人には分からない。


「アジトかどうかは分かりませんが奴等が持っていた地図です。」


そう言うとコルツは地図を出してテーブルに広げた。

マコトは読めなかったがイリスはふむふむと唸っていた。


「ここがナチューロだとすると…………ここですね。奴等が出発した場所は。」

「え?そこにアジトで間違いないじゃん。」

「普通はそうなんだが出発地点が山になっているんだ。」

「ってことは山にアジトがあるんじゃないの?」


山に印があるなら当然かとマコトは思った。


「そうなんだけど、ここの山って洞窟が多いから特定が難しいんだよ。」

「そう。そこが問題なのです。洞窟が何処に繋がっているかも分からないので他から来ている可能性もあります。」

「なるほど。」


良く考えるなあとマコトは感心しきりだった。

すると、地図を穴が開くように見ていたイリスはふと地図から目を上げた。


「とりあえず行くしかないわね。ここで悩んでも答えは出なそう、」

「…………まあ、そうだよね。」


イリスの男気溢れる発言にマコトは同調するしかなかった。


「じゃあ準備してすぐに行きましょう。コルツさんお願いします。」

「分かりました。準備させましょう。」


決めると早いのはイリスも商人も一緒だった。

ただ一人マコトだけが若干遅れぎみだったが、急いで追い付きイリスの準備を手伝う事にした。

この世界キレキレの人が多くて焦ります。

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