たった一人の戦い
盗賊団たちはリブレの予想通り行商人に変装をしていた。
彼らの作戦は堂々と南門から行商人を装って上手く入ることが出来たら朝の日の明けないうちに予め目星をつけておいた商会に押し入り金品を狙い日が明けきる前に逃げるという大胆極まりない作戦だった。
しかし、其のために十分な準備はしてきた。
行商人の作法、喋り方、身だしなみを学び門を通るのに必要な手形をも金を払って偽造した。
しかしこれは盗賊団が自分達で練った作戦ではない。
ある日のことだった。
その者は現れた。
全身を灰色のローブで覆い顔も分からなかった。性別すらも。
声も思い出せない。
しかし、その者の話を信じれば万事上手くいくという確信は何故か得られた。
得る情報は詳細で確かなものだった。
しかしその者はいつの間にかいなくなった。
だが、どうしても作戦は遂行したないといけない。
盗賊団全員がそう思えたのだ。
そして、とうとう目的地であるナチューロまでやって来たのだ。
ここまでは予定通りだ。
そしてこれからも…………先頭の男がそう思ったその時だった。
「止まれ!止まれ!」
誰かが行くてを遮った。
これは予定にはない。
だがこういう時の対応も心得ている。
交渉に来た商人と言えばいい。
丁寧に腰を低く話すこれだけで大丈夫だ。
間違いない。
そのはずだった。
しかし…………
「…………やっと、来たな。…………盗賊め。」
マコトは盗賊団の隊列の前に大きく腕を広げて彼らの行く手を阻んだ。
少しでも身なりが良く見えるようにボロボロの上着は脱いで今は元の世界から着てきたワイシャツ姿だった。
マコトは大きく開かれた手の先は小刻みに震えていた。
しかし、マコトはその震えを押さえるように大声で叫んだ。
「……………何の事でしょうか?我々はこの後、明朝にこちらの村の商会にて会談を開く予定ですので来た次第ですが?」
先頭に立つ男が丁寧な口調で答えた。
彼らの身なりは高級感を感じるとまではいかないが端から見るとしっかりとした身なりの者に見える格好をしていた。
「なるほど、ではその会談は何の会談で?」
「それに関しては相手との約束故に秘匿としております。」
マコトの問いに対しても差し障りなく答えるここまでは完璧だった。
先頭に立つ男は後は門を通るための手形を見せればこの男は穏便にここを立ち去り自分達はナチューロに忍び込めると思った。
「先程、ドゥヴァから来た商人が途中で盗賊団を見たという話がありここで検査しています。」
「…………それでですか?私達は知りませんが…………」
「そうですか。では少しだけ調べさせて頂きます。」
「ああ、荷物ですか?どうぞどうぞ。」
これも予測通りだった。
荷物の中には何もなかった。
武器の類いや道具は先に入った仲間が所定の位置に置いている。だから調べられても何も出ないこれも教わった事だった。
だから全員調べられても言い訳可能なナイフのような物しか持っていなかった。
「…………いえ、違います。実は私は『アデプト』でして。」
「え?」
先頭に立つ男が考える話を間もなくマコトはボケットからスマホを取りだしそして、
「ホーリーライト!」
マコトはスマホのライトを点灯させ、先頭に立つ男の顔を照らした。
流石にこれには男も同様を隠しきれなかった。
「なっ、こっこれは何を?」
「ああ、これは神の聖なる力を使いまして嘘を見破るのです。もし嘘をつくとこうなります。ファイア!」
マコトが叫び近くの岩に光を当てるとその近くにあった岩が燃え始めた。
それを見た隊列の男たちはざわざわと騒ぎ始めた。
「……いえ、我々は違いますよ。そんな盗賊団などでは…………」
「では、このホーリーライトを当ててもいいですか?もし嘘なら…………」
「くっ…………」
マコトはチャンスだと思った。
相手は明らかにマコトの事を『アデプト』だと思っているここで畳み掛ければ追い返せるかもと思った。
「諦めろ!もうすぐここに衛兵も来る。そうしたら終わりだぞ。」
これで引き下がってくれ!心の中でマコトはそう叫んだ。
しかし…………
「くははは!そうか、衛兵が来るのか?ははは、…………お前知らないのか?」
先頭に立つ男は突然笑いだした。
そして不気味にマコトに問いかけた
マコトはその豹変に何事かと驚いた。
「な、何がだ?」
「知らないなら教えてやるよ。衛兵はな。村を守る為の部隊だ。お前の言うとおりなら今頃中で守りだけを固めてるよ。俺らが入って来れないようにな。だからここには来ない。絶対にな。」
「なっ!」
マコトにはこれは想定外だった。
マコトはリブレに衛兵たちの所に行って危機を知らせた上で自分がここで時間を稼げば助けが来て仮に盗賊団を取り逃がしても自分も助かるし村も助けられると思っていたが来ないというのは頭になかった。
「確かに今回は引き下がるしかないかもな。でもなお前はここで殺すぞ。顔を見られたからな。その後で一旦戻って落ち着いた頃にまた来てやるよ。その時はどうするかな?」
マコトはこれはまずいと思った。
これではただの犬死になってしまう。
「ふ、『アデプト』を舐めるなよ。お前らなんか魔法で一発だぞ!」
マコトは精一杯の威嚇をした。
しかしそれは全く意味をなさなかった。
「やってみろよ。そんな魔法は詠唱に時間がかかるんだろ?その間に殺ってやるよ。」
既にマコトに対して怒りを抱えた盗賊団には何を言っても無駄だった。
マコトは死を覚悟した。
先頭の男がナイフを掲げマコトの目の前に立った。
マコトは蛇に睨まれた蛙のように全く動けなかった。
足がいうことを聞いてくれないのだ。
「じゃあ死ねや!」
「うわあ!」
その時だった。
「「《火炎弾!!》」」
「!?」
「火の玉が飛んでくるぞ!」
「回避!」
「うわっ!」
背後からの声と前の盗賊団の誰かが叫んだ声が響き渡った。
その直ぐに後だった。
マコトと盗賊団のすぐ側に二つの爆発がおきた。
「ぐはっっく!」
マコトはその勢いで道の端の方へと飛ばされた。
マコトは地面に打ち付けられ声にならない声を吐いた。
全身に激痛が走ったがそれを気にする暇はなかった。
「くはっ!痛っ!何が起きた?」
マコトは痛みを堪えて直ぐに起き上がるとさっきまで自分が背にしていた方つまりナチューロの南門を見た。そこには…………
「いくぞ!突撃!」
「「「おおおお!!!」」」
20人はいるだろうか。『ナイト』や『ランサー』、『フェンサー』といった様々な前衛戦士と
「もう一度奴等の退路を絶つんだ!放て!!」
「「「《火炎弾!!》」」」
恐らく『アデプト』だろう。
後衛の術士達が盗賊団に向けて一気呵成に攻撃を仕掛けていた。
盗賊団は最初の火炎弾で完全に混乱していて敗走しようとした者もいたが次の火炎弾で完全に退路を失い右往左往していてもはや統率どころではなかった。
「あれは…………」
マコトはその勇ましい戦士達の中に一人見覚えのある顔を見た。
それは戦場でも映える美しい緋色の髪をした女の子だった。
「イリス。」
やっと次回イリスが帰ってきます!




