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不運な男

ども。懲りずに新作です。


今回も見てくださる方はよろしくお願いします。

世の中は絶対的に不平等だ。

お金持ちがいて貧乏人がいる。

運が有るものがいて無いものがいる。

そして後者ならみんな思う『何故俺だけ……』と。



コウノマコトは確実に後者である。とにかく運がない。

昔から不運の中でも生きてきた。

おみくじは引けば必ず凶。商店街のくじ引きもティッシュすら当たらない。

これならまだいい方だ。

突然誰かも知らない人に浮気相手と間違えられ包丁持って追いかけられたり、人助けをすれば犯人と間違えられる。

世の中は全くもって不平等である。

そして今は…………


「ぐおーーー!俺が何したってんだ!」


学校が終わって帰る途中だった。

今日は不運な事なく終わるのではと内心喜んでいた矢先のこと、正面から数人の男が歩いてきた。

いつも通りの嫌な予感がして少し距離をおいてすれ違おうとした。

がしかしすれ違い様に男たちの中の一人が何やら話していた。

全く面識はないはずだったが長年の不運経験の成果でヤバいと判断し直ぐに走った。

すると予感は的中し突然男たちが追いかけてきた。

そして今街中を疾走し逃げている最中という状況である。


「くそ!こっちか!」


大通りは諦め裏路地に逃げ込む事にした。

いつものパターンに陥っているなとマコトは自分の事を情けなく思った。


「何で俺ばっかり……」


因みに途中にあった交番はお巡りさんが巡回中という不運をやはり引き当てて不在でもはや一人で逃げ切るしかなかった。

狭い路地を右に左に何とか逃げ切ろうとするが後ろからの罵声はいくら走っても消えずそろそろ呼吸も限界に近かった。


「はあ、はあ、もう無理。どこか…………」


辺りを見渡すとちょうど目の前に扉が見えた。

何処にでもある何の変哲もない扉だったが走り回ってだいぶ疲弊したマコトにはそれが救世主のように見えた。


「…………もう一か八かだ。」


思いきってその扉に入ることにした。

鍵は開いていて中は薄暗かったが隠れるのには好都合だった。


「珍しくラッキーか?…………隠れるのにも丁度いいな。」


扉を閉めて奥の方に隠れることにした。

奥まで真っ直ぐ廊下が続いておりずっと先まで薄暗いままだった。

マコトは自分の不運はよく心得ていた。

扉の側にいてはまたどうせさっきの奴等がたまたま入ってきて捕まるのは目に見えていた。

なので更に奥に行き更に身を隠せる所を探した。


「……奥行ったら危ない奴の溜まり場とかじゃないよな。」


恐る恐る奥へと歩みを進めていくとまた一枚ドアがあった。

そろそろ戻るかとも思ったが戻ってさっきの奴等に出会すのも嫌だったので仕方なくドアを開けることにした。


「ん?今度は部屋か?」


入った所は部屋になっていてやはりここも薄暗かった。

しかし僅かながらに光があり空間であることは認識できた。


「…………失礼しまーす。」


そろりそろりと出来るだけ気配を消して入ると奥に誰かいるのが分かった。

そこには小さな電球が光っておりタキシードを着た老紳士が椅子に座っていた。


「すっすみません。実は俺、今外でチンピラに絡まれて逃げてきたんです。そしたら丁度扉があってそこに逃げ込んだらここに着いて……」


怒られないようにと必死に弁解するが逆にしどろもどろになってしまった。

すると目の前の老紳士は、全く微動だにせず目だけがマコトを捕らえた。


「君は今の世の中は平等だと思うかい?」

「え?」

「君はこの世の中は自分に優しいと思うかい?」


突然の質問に驚きを隠しきれないのと同時に妙に言葉が胸に刺さるような気がした。

そしてその刺さったものは抜けることがなかった。


「俺は…………」


マコトはその瞬間自分の中の何かがざわつくのが分かった。

そして、今までの自分がフラッシュバックしてきた。

忌々しい思いでたちばかりだった。

この質問答えは簡単だ。


「答えはNOだ。この世の中は優しくもなんともない。出来るならやり直したいくらいだ。」


そう。俺にも運がある世界でと目覚めマコトは本気で思った。

すると老紳士はその場に立ち上がりこう言った。


「そうか。では君に問う。君の欲しいものを一つだけ与える。そんな世界を望むか?」

「欲しいものだけ?」


俺の欲しいもの…………運。ラッキー。それで生きる…………今までにない人生…………それしかなかった。


「へへ。最高だな。勿論答えはYESだ!どうせこのまま生きててもいつ不運の殺されるかわかんねーしな。」

「分かった。では少年よ。新たな人生の船出だ!」


その瞬間、マコトの入ってきたドアが勢いよく開きマコトはそのドアに吸い込まれた。


「ぐわああああ。なんじゃこりゃー!」


マコトを吸い込み終えたドアは静かに閉まった。

薄暗い部屋に一人の老紳士を残して。


「さて、どこまでいけるかな?」



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