表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この度、公爵家の令嬢の婚約者となりました。しかし、噂では性格が悪く、十歳も年上です。  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
九章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

440/499

26.これからの相談1.




「なるほど、始祖復活ですか。女性の子孫が依り代になることで可能とは……正直に申し上げて、信じられません。そのようなことが本当にできるのでしょうか?」

「残念なことに、できるみたいです。ラスムスは始祖復活が前提で話をしていますし、晴嵐もできないとは言いませんでした」

「私には判断できかねる問題ですね。本当に始祖が復活しようものなら、どのようなことをしてでも阻止しなければならないでしょう」

「直系の子孫が復活を阻みたいくらいですから、決していいことにはならないんでしょうね」


 ラスムスの話が本当ならば、始祖が復活すれば戦争が起こる可能性がある。場合によっては竜と戦わなければならない事態も起こりうるのだ。

 先日、国家反逆を企んだ男を倒し、平和な時間を過ごせると思っていたのに、たまったものではない。

 こうも定期的に厄介ごとがやってくるのはごめん被りたかった。


「竜王国の晴嵐様までが関わっているとは存じませんでした。先日、国王とお会いしたのは存じていましたが、定期的な会合だったはずです」

「俺には晴嵐が何を考えているのかわかりません。でも、あいつも始祖復活は阻止したいそうです」

「確か、マーフィー様は晴嵐様とお知り合いだとか。もしかすると、国の問題とするのではなく、あなたたちにお力を借りて解決したかったのかもしれませんね。あなたの周りにはそれだけの戦力が集まっていますから」


 一国の王子として、その対応は如何なものかと苦笑する。

 ただ、始祖復活など、誰が信じようか。信じたところで、混乱を招くだけだ。ならば、知る者を最小限にして片付けることができれば、理想なのかもしれない。


 デニスの言う通り、戦力は豊富だ。ジャレッドをはじめ、プファイル、ローザ、そしてワハシュとアルメイダがいる。最低でも、宮廷魔術師に匹敵する実力者なのだから、少数精鋭を求めるにはもってこいだ。


「あくまでも推測ですが、カサンドラ殿は強引な手段を取ってでも、マーフィー様たちを止めたかったのかもしれませんね。始祖復活を叶えて、どうしたいのかまで私には皆目見当もつきませんが、あとで責任追及されても構わないのでしょう」

「俺も同じようなことを考えていました。今まで目立った行動がなかったハーゲンドルフ公爵が、なぜこんなわかりやすい馬鹿なことをしたのか。きっと始祖を復活させればどうでもいいってことなんだ、と。でも、肝心な始祖を復活した後、なにをしたいかがわからないんですよね」


 はっきり言って、カサンドラが後先考えずに行動したことや、始祖復活が果たされることではなく、復活した始祖を使ってなにをしようとしているのかわからないのが怖い。

 復活を阻むことはもちろんだが、カサンドラの真の企みを知らないままでは自分たちの行動が間違っていないか心配になる。


  ――でも、始祖が復活したからって、世の中がよくなるとか、争いがなくなるとかそういうのはありえない。

 

 考えやすいのは公爵自身の私怨だ。例えば、母の身分が低かったせいでひどい扱いをした兄弟に復讐することが、考えられるが、現時点でそれは叶っている。

 現在はさておき、親しかったラスムスや、オリヴィエが目的を推測することもできないのなら、ジャレッドに予想することなど不可能に近い。

 

 ――俺にできることは戦うことだけかな。


 適材適所なのだろうが、何事も戦いでしか解決できない自分に、少々落ち込むこともある。

 もっと言えば、だいたいが後手に回ることが多いので、苛立ちも結構溜まっていたりするのだ。


「それで、これから俺はどうすればいいんですか? デニスさんと一緒に、ハーゲンドルフ公爵家に殴り込みでもしましょうか?」

「とても魅力的な提案ですが、相手の戦力も規模も不明ですので残念ながら次の機会にしましょう」

「それは俺も残念です」


 軽口ではなく、ジャレッドはできることなら本気でやってしまいたかった。

 カサンドラの企みも、ラスムスの事情もいい加減にしてほしい。なによりも、始祖が復活するための器の候補に、オリヴィエも選ばれる可能性があることが納得できない。


 ――やりたきゃ自分を犠牲にしてやってみせろ。


 それだけの覚悟と意気込みがあるのなら、やればいい。だが、無関係な人間を巻き込んで引っ搔き回さなければいけないのなら、やるなと声を大にして言いたい。


「マーフィー様には、このまま私と一緒にハーゲンドルフ公爵領に向かってもらいたいのです」

「構いませんが、どうしてわざわざ敵地に?」


 殴り込むならさておき、現状では相手側に向かう理由がわからない。いや、敵情視察するという目的があるが、ジャレッドではそのようなことには適さない。


「向こう側に、情報提供者がいます」

「……どなたですか?」

「カサンドラ殿の乳母に当たる方です」

「うわぁ、乳母が内通者ですか……それは、なんというか」


 敵対する人間ではあるが、カサンドラの味方の少なさに唖然とする。


「いいえ、内通者というわけではないのです。そう見えてしまうでしょうが、乳母殿はカサンドラ殿を案じた上での情報提供なのですよ」

「信じていいんですか?」

「それを確かめにこれからご一緒してほしいのです。乳母殿は、親族内に敵を作りすぎているカサンドラ殿が、暴走しているため止めたいとのことです。しかし、表立ってなにかをすれば公爵家当主という立場が危うくなる。ゆえに、私に水面下で連絡がありました」


 もっとも、その連絡のあとに別の公爵家に私兵を送るという暴挙をしているため、乳母の気遣いが無駄になりそうだ。


「心配してくれる人がそばにいるのに、始祖復活なんて……する必要があったんですかね」

「さあ、私にはカサンドラ殿の気持ちはわかりかねます」


 いずれ顔を合わせるときがくるだろう。そうしたら、思いっきり「馬鹿野郎」と言おうとジャレッドは決めた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ