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この度、公爵家の令嬢の婚約者となりました。しかし、噂では性格が悪く、十歳も年上です。  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
九章

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17.復活を企む者3.



「僕たちは世代を重ねながら始祖を完全に殺す方法を求めた。いつか違う時代で、始祖を求めて誰かが復活させないように。その過程で魔術は進化していく。それでも始祖は殺せない。始祖はいろいろな人間を使い、復活を企んだ。ルーカスくんがはじめてだったわけじゃない」

「だろうな」


 そのくらいの想像はできる。

 ルーカス・ギャラガーが行動を起こしたのは最近だ。ならば、それまでに始祖の影響を受けた他の誰かが行動を起こしていると考えたほうがしっくりくる。


 なぜならルーカス・ギャラガーの行動はお世辞にも頭のいいものじゃなかった。わざわざオリヴィエを人質に取り、ジャレッドを捉え、あえて巻き込んだ。それが陽動だったと言われればそうなのだが、息子を含めルーカスはジャレッドに敗北している。

 関わらせないことに徹していれば、今頃目的は果たしていたかもしれない。


「そして現代。僕は始祖を殺す手段を探し、見つけた。だが、僕にはできなかった。だから、僕の代わりに始祖を殺すことができる人間を探し続けたんだ」


 どのような手段で始祖を殺せるのか不明ではあるが、よほどの魔術師でなければ難しいだろう。そうでなければ、ワハシュやアルメイダに始祖を殺させればいい。そのほうがよほど早い。

 だが、それは叶わなかった。


「ついでに、と言ってしまうのも変な話だけど、僕たちの子孫が暮らすウェザード王国をよりよいものになるよう動き続けてもいたんだ」

「どういうことだ?」

「僕は各時代で、この国の膿を取り除こうとした。同時に、才能ある若者を誘導し、育て、成長を促す過程でウェザード王国の病巣ともなる腐った人間とぶつけつづけた。時間をかけてこの国はよくなっていったよ。しかし、始祖を殺せるだけの人材は育たない。だから僕は続けたんだ」

「……待ちなさい」


 急にラスムスの話を遮ったオリヴィエに一同の視線が集まる。


「なにかな、オリヴィエくん」

「あなた、まさか、その才能ある若者にジャレッドが含まれているとでもいいたいの?」

「それはもちろん――含まれているよ」

「な、に」


 突然の出来事に、ジャレッドの思考が止まった。

 まさか、この流れで自分が当事者であるとは思いもしなかったのだ。


「ジャレッドくんのことは生まれたときから気にかけていたよ。ワハシュくんの孫であり、始祖の血を引く君は僕の希望のひとつだった。辛いこともたくさんあったね。でも、君はすべて乗り越えてきた」

「……あなた、全部知っていたの?」


 オリヴィエの声が感情によって震える。その感情が怒りか、困惑なのかは、ジャレッドにはわからなかった。


「知っていたよ。彼の悲しみも、涙も、努力も、すべて見てきたからね。そして、君ならと思った。ジャレッド・マーフィーなら始祖を殺せる才能があるかもしれないと。だから僕は魔術師協会の協力者に頼んで実力を試し、満足した。もっと才能を伸ばすために、宮廷魔術師になるよう推薦させもした」

「お前が……俺を? じゃあ、なにか、俺は全部あんたの掌の上で踊っていただけか?」

「それは誤解だ。君のしてきたことはすべて、君自身のものだ。僕は見守り、時折課題を与えていただけに過ぎない。特に、君がオリヴィエくんと出会ってからなにもしていないよ」


 そんなことを言われても安心することなどできなかった。

 当たり前だ。いくら始祖を殺すという目的があったとしても、自分をひとつの駒のように誘導されていたとわかれば不快でしかない。


「僕は嘘はつかない。だから持って言っておこう。君が正式に宮廷魔術師になってから、僕は本格的に誘導するつもりだった。この国の腐敗とぶつけるために。でもね、ルーカスくんのおかげで、この国の膿の大半は駆除できた。そのことだけは感謝しているかな」

「ああ、そうか、そうなんだな。あんた……」


 ジャレッドはようやくラスムス・ローウッドという少年のことがわかった気がした。

 彼は、目的を持って生きている。始祖の復活を阻むこと。遠い子孫たちが暮らすウェザード王国をよい国にすること。それは、民と子孫と未来のために復活しようとする始祖とそうかわらない。


「言わなくていい。自覚はしているから。当てもなく生き残ってしまっている哀れな人間には、それくらいの目標しかないんだよ。巻き込まれた君にとってはたまったものじゃないだろうけどね。そこだけは謝罪しておくよ」

「……勝手にしろ。どちらにせよ、事が片付いたらあんたのことを一発ぶん殴らせてもらう」

「約束しよう。思い切り殴ってくれて構わないよ」


 正直なところ、思う事は多々ある。自分は操り人形じゃないと声を大にしていいたい。しかし、そんなことはラスムスもわかっている。彼はわかった上で行動しているのだ。

 言うだけ無駄だと思ったわけじゃない。ただ、他に生きる目的を持たない哀れな人間に、ジャレッドは少し同情してしまっただけ。


「それじゃあ、さくっと結論だけ言ってくれ。どうやって始祖を殺すんだ?」

「始祖が器を使い復活した瞬間、二度目の死を与えるんだ」




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