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この度、公爵家の令嬢の婚約者となりました。しかし、噂では性格が悪く、十歳も年上です。  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
八章

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20.囚われの身5. オリヴィエ3.



「あなた――わたくし、勘違いをしていたわ、ごめんなさい。助けにきてくれて、ありがとう」

「ふひひっ、構いません。ですが、感謝してくださるのなら――これをどうぞ」


 ジドックが懐から取りだした物をオリヴィエに手渡すと、彼女は怪訝な表情を作り問う。


「なにかしら、この乗馬用の鞭は?」

「ご褒美にこれで拙者の尻を叩いていただけると――はうっっ、ありがとうございますっ」

「……助かったはずなのに汚された気分だわ。あまり考えたくないので話を進めましょう、ジドック」

「はぁはぁそうですな」


 頬を赤くして熱い吐息を漏らす小太りの青年を極力視界に納めないようにしつつ、オリヴィエは話を進めていくことにした。


「助けにきてくれたのは感謝しているのだけれど、なにか手はずはあるの?」


 問われ、真面目な表情に切り替えるジドック。


「一応、兵は離れた場所に待機させてあります。なにかが起きればすぐに行動せよ、と。不安があるとすればこの場にはずいぶん魔術師がいるので、拙者が連れてきた兵がどれだけ力になるか……。残された手段は、拙者がオリヴィエたんの肉の壁となり無事に外までお連れするしか」

「子供がいる方にそこまでさせるのはちょっとね。気持ちだけでいいわ」

「拙者の覚悟が無駄ですなぁ。はぁはぁ」

「……あなたね、もう少しでいいから真面目にやれないの? まあ、いいわ。実はね、脱出するのならひとつだけ手段があるのだけれど、そのためにはもうどこかに囚われている女の子が必要なの」


 竜の少女璃桜もオリヴィエ同様に囚われている。問題は、どこにるのか、だ。


「ふむ。女の子といいますと、かわいらしい竜の少女ですかな?」

「知っているの?」

「はい。この部屋にくる前に一目だけですが、厳重に封印されている姿を見かけました。竜の少女というのは珍しかったのでよく覚えていますぞ」

「この屋敷にいるのね。ならよかったわ」


 オリヴィエは家族の無事に心から安堵する。

 人間を超える種族である竜の璃桜が、いくら子供とはいえどうこうされるとは今まで思っていなかった。聞けば、ジャレッドを素手で凌駕したのだ、少なく見積もっても宮廷魔術師以上の力を有していることになる。


 しかし、屋敷の襲撃の際は簡単に無力化されてしまったことを聞いた。いくら竜だからといっても対策さえすれば対処はできるのだと思い知らされた。


「ジャレッドの居場所は? 彼がどこにいるのかわかるかしら?」


 ジドックは残念だと言わんばかりに首を横に振った。


「残念ながら、若き宮廷魔術師殿はこの屋敷とは別の場所のようです」

「そう……なら少しでも早く私たちも脱出しましょう」


 ジャレッドが同じ場所に囚われていない以上、オリヴィエがここに留まる理由はない。早く脱出して今度は婚約者を助けなければならないのだ。


「変わりましたなオリヴィエたん。以前のあなたは気丈に振る舞われていても、無理をしているようでした。今のあなたは本当に強くなられましたな」

「ありがとう。きっとジャレッドのおかげね」

「ふひひっ。ならば早く脱出し、婚約者殿もお救いしましょう」


 頷きあう二人。

 まさかかつて婚約者候補としてオリヴィエの前に現れ、散々罵倒されたジドックがこうして助けにきてくれるとは思わなかった。感謝されることになるとは予想外だったし、驚愕したことは言うまでもない。


 オリヴィエはジドックに心から感謝する。かつて強がっていたオリヴィエによって心ない暴言を吐かれながらも恨まずにいてくれたことに。


「ここから出たらあなたにはきちんとお礼をするわ」

「ふひひっ。もうお礼ならもらっていますよ。で、ですが、そのどうしてもいうのならせっかくお渡しした鞭を有効活用していただければ――はうっっ、ありがとうございますっ」

「これがなかったらもっと尊敬できるのに」


 尻を鞭で叩かれ恍惚としている変態にため息が漏れる。


「はぁはぁ……そういえば脱出する手段があるといいましたが、それはいったいどのような手段ですかな?」

「それはね――」


 今までにない不敵な笑顔を浮かべるオリヴィエ。


「竜の力を私が使うのよ」



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