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この度、公爵家の令嬢の婚約者となりました。しかし、噂では性格が悪く、十歳も年上です。  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
八章

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7.残された者たち6. 敵の行方2.




 情報を待っていた一同のもとにヴァールトイフェルの密偵が現れたのは一時間も経たなかった。

 音もなく窓の外のテラスに降り立った密偵に気づいたのは、プファイルとルザーだけ。


「存外早かったな」


 部下の仕事に頷きプファイルは情報を耳打ちされる。感情を消していた彼の顔色が、部下の言葉を聞く度に悪くなるのが目に見えて周囲にわかった。


「どうしたのかね、プファイル?」

「正統魔術師軍の面々はどうやら相当慎重に事を運ぶつもりらしい。居場所がはっきりしなかったそうだ」


 大陸一の暗殺組織とはいえ、情報収集においても優れていることはアルウェイ公爵をはじめこの場にいる誰もが知っていることだ。期待が大きかっただけに落胆も大きかった。


「他に情報はあるかね?」

「王宮、魔術師協会は幸い無事のようだ。どちらも宮廷魔術師が守り通したようだ。他の公爵家も無事が確認されているようだが、一部連絡がつかない当主もいるらしい」

「王宮と魔術師協会が無事なことは喜ばしい。これでひとつ、憂いが消えたね」

「大量の捕縛者が出ているようだ。騎士団と反逆に加わらなかった王立魔術師団の団員が対応に当たっているようだ。ラウレンツ、捕縛者の中には王立学園の生徒も含まれているという」

「――っ、そうか、情報感謝する」


 苦い顔をしたラウレンツの肩を、隣りにいたルザーが慰めるように叩く。

 おそらく学園でレナードを止めることができなかったことを気にしているようだが、なにもかもが後手に回っていた状況下で甘言に誘惑された生徒を取り戻すことはラウレンツにはできなかっただろう。


 生徒たちが不満を覚え、嫉妬する対象にラウレンツが含まれることになるのだと、レナードが暴露してしまったのだから。

 王族であるラーズを無事に守り通しただけで快挙と呼べるのだが、納得はできていないようだ。


「生徒たちの様子はどうなのかわかるかい?」


 公爵の問いにプファイルは頷く。


「全員が揃って、なにかに操られているようにしか見えないらしい。おそらく、エルネスタを操ったとされる正統魔術師軍の呪術師の仕業と考えていいだろう」

「操られているのならば、罪に問うこともしなくていいかもしれないね。問題は、如何にして呪術から解き放つかどうかだが、今の私たちでは考えもつかない」

「所詮、私をはじめこの場にいる面々は戦闘者だ。解呪に関しては魔術師協会に任せるほかあるまい」


 プファイルの言葉は正論であった。どれだけこの場で生徒のことを案じようとも解決方法が浮かぶわけではない。ならば自分たちができる範囲で最善を尽くすだけだ。


「それよりも一部の公爵家当主と貴族たちに連絡がつかないことが気になる。私は、奴らが正統魔術師軍に加担し、この国に反逆しているのではないかと考えている。どう思う、アルウェイ公爵?」

「残念ではあるが、現状ではその可能性は否定できない。無論、肯定することも簡単ではないがね。もしかすると危害を加えられたせいで連絡がつかず、助けを待っているだけかもしれない。様々な可能性がある以上、見極めることが難しいのは正直痛いね」

「アルウェイ公爵のおっしゃる通り、誰が反逆者なのかわからない以上、その辺は無視したほうが賢明ではないでしょうか?」


 頭を抱える公爵へ提案したのはルザーだ。

 彼は続ける。


「王宮と魔術師協会の無事が確認できた以上、俺たちが最優先にすべきことはオリヴィエさまとジャレッドの救出です。これは時間が経てた経つほど難しくなる」


 今はまだ二人は無事だろう。しかし、一時間後はわからない。

 ラウレンツの情報からジャレッドが敵の駒として利用されようとしていることがわかっている。どのような形でジャレッドを駒にするのかまで把握できないが、彼が敵として立ちはだかる可能性も最悪あるのだ。


 オリヴィエも同じだ。今はジャレッドに対する人質として有効かもしれないが、不必要と判断されてしまえば命を奪われるかもしれない。

 後手に回り過ぎている現状では、最悪のケースも想定して動いていたほうがいいのだ。たとえ、それがどんなに訪れてほしくない未来であっても。


「ルザーくんの言うことも理解できる。もちろん私だって娘を最優先で助けたい。しかし――」


 おそらく公爵を躊躇わせているのは王都守護の任を任されている立場だからだろう。


「オリヴィエさまたちを助けることが敵を倒すことに繋がると俺は思います」

「ルザーに賛成だ。私は守ることに適していない。ゆえに敵を見つけ倒してしまったほうが早いとさえ思う」

「僕も今はオリヴィエさまとジャレッドのことを考えるべきだと思います」


 ルザーだけではなく、プファイルとラウレンツも現状においてジャレッドとオリヴィエの救出を最優先するべきだと公爵に進言した。


「……わかった。君たちの言うとおりにしよう。私たちはオリヴィエとジャレッドの二人を救い出す。それこそが反逆者たちを倒すことに繋がると信じているからだ」


 一同は頷く。


「では、囚われの娘たちを居場所を見つけだそう。プファイルくん、情報はほかにもあるかな?」




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