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この度、公爵家の令嬢の婚約者となりました。しかし、噂では性格が悪く、十歳も年上です。  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
八章

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3.残された者たち3. 合流1.




「まさかジャレッドが本当に攫われているなんてっ、くそっ」


 学園を襲った王立魔術師団のトップを逃してしまったラウレンツ・ヘリングは、学園を教師たちに任せてジャレッドの安否を確かめようと急いだ。

 今回の首謀者――レナード・ギャラガーの言い残した言葉は、ジャレッドを駒にするというなんとも許しがたいものだ。

 友人の力をよく知るラウレンツは、不安を覚えながらもありえないと考えた。しかし、レナードの言葉通り、人質を取られ捕まったという。


「実にジャレッドに有効な方法を取ったみたいだな。つまり、ヘリングくんの聞いた言葉通り、レナードの狙いはジャレッドにあったのか、それとも事のついでか……判断に迷うね」

「反逆者などの言葉はどうでもいいことだ。ジャレッドの甘さが敗因だ。もっとも、奴らしいと言えばそれまでだ。私にはオリヴィエを犠牲にしてでも戦おうとするあの男など想像することもできない」

「違いない」


 屋敷を囲む王立魔術師団の面々と遭遇するも、同じく屋敷に現れたプファイルと共闘することで全員倒すことができた。

 ラウレンツはプファイルに会っており覚えていた。相手もそうだったようで、言葉を短くかわすだけで協力関係になれたことは幸いだった。


 レナードはよほどジャレッドを危険視していたのか、魔術師たちの質は学園に集まった者たちよりも上であり、有無を言わさず命を奪わんと襲いかかってきた。

 できることなら命を奪いたくなかったが、多勢に無勢の状況下で、戦闘経験も実力も上回る相手に手加減などできず、ラウレンツも相手の命を奪うつもりで応戦した。

 未だ生きている者はいるが、手当てをしてやる余裕などない。


 ちらり、と視線を移せば馬車に乗りこむ女性陣の姿がある。

 公爵夫人であるハンネローネはもちろん、リュディガー公爵家令嬢のリリーも安全な場所に移さなければならない。


 できることなら一刻も早くジャレッドとオリヴィエを助けたいと思っているのだが、そもそも敵がどこに逃げたのかさえ把握できていないため、順番はどうしても後回しになってしまう。

 今も、プファイルとルザーの三人で情報交換をしているのだが、この時間をもどかしく感じてしまうのは致し方がないことだった。


「ハンネローネさまたちをアルウェイ公爵家に無事に届けたら、ヴァールトイフェルを使ってジャレッドたちの居場所を探させよう」

「いいのか?」

「構わん。お前たち同様に、私も二人の身を案じている。なによりも、同じ場所にエルネスタがいる」

「ジャレッドの秘書官だったね。リリー・リュディガーさまの言葉では操られているようだったと聞いたけど、まるでかつての俺を思い出す」


 長い間、ヴァールトイフェルを操っていた人間に支配されていたルザーは苦い顔をする。

 結果的にジャレッドたちに助けられたが、それでも操り人形として悪事の片棒を担いできたのだ。


「ドルフ・エインがお前に使ったお粗末な魔術ではない。おそらくエルネスタは呪術によって支配されているのだろう。ゆえに、リュディガー公爵領で倒れていたとき、見つけた私が気づけなかった」


 本来魔術の使用を戦闘において禁じられているヴァールトイフェルだが、学ぶことまで禁じられているわけではない。むしろ、限界を超えるまで学ばされる傾向にある。

 だが、魔術を学んでも呪術まで学ぶことはない。そもそも呪術とは現代においてほとんど資料や文献がなく、使い手も過去の技術を触り程度しか行使できない。どちらかといえば、研究者が手をだすタイプのものだ。


「本来なら使い手が存在しないと言われる呪術を使える人間が敵サイドにいるということは、レナードのいうジャレッドを駒にするということも、呪術を使えば可能ということかな?」

「おそらくはな」

「くそっ、ジャレッドが敵に回れば大参事だぞ! 僕たちだけで歯が立つかどうか」


 学友の言葉に、兄と暗殺者が眉間に皺を寄せる。

 そう。この場にいる、三人の共通点はジャレッドの友人であると同時に、戦い敗北した過去を持つのだ。


「ラウレンツ・ヘリング、言っておくが私はジャレッドに一度負けたが、二度目の敗北をするつもりはない。無論、操られたジャレッドが現れたとしても、倒すだけだ」

「おいおい、ムキになるなよ。ただ、あの甘ちゃんが本当に呪術で操られて甘さを失くしたら――正直敵対することが怖いな」

「ふん。ならば私に任せておけばいい。殺してやろう」

「ふざけるなっ、殺してどうするんだっ!」

「気にするな。冗談だ」

「お、お前の言葉は冗談に聞こえないんだよっ!」

「騒がしいな、ラウレンツ・ヘリング」

「お前のせいだっ」


 間違いなく殺意を瞳に宿していたのを見逃さなかったラウレンツが噛みつくも、プファイルは冗談だと押し通す。

 こんな事態になにを――と思えるやりとりではあるが、気の沈んでいた彼らにとってちょっとした気分転換になったのかもしれない。


「そのくらいにしておきなって。公爵夫人たちが支度を終えたようだから、アルウェイ公爵家に急ごう」

「――っ、わかっている。御者は僕が務めよう」

「なら俺は護衛役として並んで歩くよ」

「私は道のりに危険がないか確認してくる」

「ああ、よろしく――って、もういないし。仕事が早いな、さすがヴァールトイフェルの後継者だ」


 それぞれの役割を見つけた三人は、ハンネローネたちを無事にアルウェイ公爵家にまで送り届けるのだった。




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