帝国へ⑤
……クロスに黙って旅に出ようなんて無理だったね。
アルフと食材やら調理器具やら色々買っているといつも通りいつの間にかクロスが付いて来てた。
いや、探知魔法もあるけど毎日ずっと使ってるわけじゃないし。
そんなにずっと使えるほど魔力があるわけでもないし。
なんて、言い訳しながらも……つまり、旅のことがバレました。
「アヤミ、俺はそんなに頼りないか?」
「いや、クロスには色々頼らせてもらってるよ。 だけど、今回の事は私のワガママだし、クロスには学園もそうだけどやらなきゃいけないことたくさんあるんじゃない?」
クロスに旅に出ることもバレてしまったし、色々買い終わった後また家に戻り話し合いをしている。
……一緒に旅に出たいクロスと断りたい私の攻防だけど。
「それに、私が行こうとしてるのは帝国だよ?」
「だから、余計に心配なんだ」
「クロスの心配は私が弱いから非常にわかってしまうんだけど」
「学園なら問題ない。 好きで通っているわけでもないし、学園を卒業しなくとも何とでもなる」
「いや、そうじゃなくて……」
学園も行かなきゃいけないだろうけど、それよりギルドの仕事の事なんですが。
まあ、クロスが最強主人公っぽいから帝だろうとかは私の予測だけども。
本当に帝じゃないなら別にどこに旅に出ようが問題はないだろうし。
でも、学園を休学してまで私に付いて来るってのは成人として許しちゃいけないでしょ。
騎士団とかに入るには学園卒業しなきゃいけないみたいだし。
クロスが騎士団とかに入るのは想像つかないけど。
「ギルドに入って修行の旅に出る奴も珍しくはない。 何よりもアヤミが大事だ」
……告白されてしばらく経つのにタイミング掴めなくて断れないまま来てしまったからね。
ここまで私なんかに惚れる理由もわからない。
「私はクロスに大事にしてもらえる様な女じゃないし、クロスとは付き合えないよ」
こんなデブスが告白されるなんて初めてで少し嬉しかったけど未成年となんて付き合えない。
この世界でも成人は二十歳からみたいだし。
ファンタジーな世界だから成人するのももう少し早いのかと思ってたけどね。
貴族とか結婚するのは成人前みたいだけど。
「アヤミが俺の事を弟ぐらいにしか思っていないのもわかってる。 だが、俺はアヤミが好きだし、アヤミに恋人が出来るまで諦めるつもりもない」