帝国へ
あれからまた数ヶ月が過ぎた。
ほぼ毎日来てたクロスが毎日来るようになった以外に変わったことはない……と、言いたいけどクロスが遠慮しなくなった。
今までは隠れてついて来たけど今は隠れずについて来るし。
私なんかより同世代の可愛い女の子を口説けばいいのに。
「アヤ姉、疲れた?」
私がため息ついたのがわかったのかアルフが心配そうに私を見上げている。
シフォンの営業も終わってホッとするのはいいけどアルフに心配かけちゃ駄目ね。
クロスだって、暫くすれば諦めるだろうしね。
「大丈夫よ、アルフ」
優しく頭を撫でてやればアルフは嬉しそうに笑う。
アルフは可愛いから癒されるわ。
これからアルフは修行があるんだから美味しい物でも作ってあげなきゃ。
「あ……の、アヤミお姉様」
アルフを撫でながらまったりしていると両手をぎゅっと握り締め不安げな表情で私を見てるリーフィが居た。
いつも元気いっぱいのリーフィが大人しくしているのも可愛いね。
……じゃなくて。
「どうかしたの?」
「わ、私……アヤミお姉様にお話したい事が……」
「リーフィ」
人の感情には疎い所もある私だけど今のリーフィは何だか悲しそう。
リーフィの話を聞こうと問い掛けるもリーフィの言葉を遮るかの様にキースが呼ぶ。
いつもより冷たいキースの声、リーフィの肩はびくっと小さく跳ねた。
リーフィがキースに怯えてる?
「キース?」
「すまん、リーフィが怖い夢を見たみたいでな。 アヤミは気にしなくていいぞ」
いつもとは違うリーフィといつもと同じキース。
……さっき初めて聞いた冷たい声だったからいつもと同じではないだろうけど。
「家族間の問題だ」
……そう言われてしまうと何も言えない。
私は二人にとってただの店長だし、家族の様に思えていても家族じゃない。
リーフィが困ってるなら助けてあげたいけど。
「何か困った事があったら言ってね?」
最初はあれだったけど、今になったらリーフィもキースも私にとって大切な人だ。
二人が困った事があるなら助けてあげたい。
私に出来ることなんて限られてくるけどね。
「……お姉様、私……アヤミお姉様の事大好きですわ」
ふわわりと微笑むリーフィはいつも以上に綺麗だった。
先ほどの怯えはなく、何か決意した様なリーフィの微笑み。
「俺もアヤミ好きだぞ。 アルフォレッドも好きだ」
「私もリーフィもキースも好きだよ」
だから、何があったかわかんないけど無茶はしないで欲しい。
最初はキースの事を厄介者扱いしてたけど良く働いてくれるし、アルフにも優しくしてくれる。
ちょっと天然?みたいな感じな所はあるけどね。
「アヤミお姉様、私達しばらく実家に帰る事になりましたの。 アヤミお姉様もお疲れなのに申し訳ないのですが……」
「そんな事なら大丈夫よ。 帰る家があるのは良いことだもん」
二人が真剣な顔してたから何かと思っちゃった。
でも、もしかしたら両親と上手くやれてなかったりするのかな?
でも、不仲だったとしても私にやってあげれる事はないからねー。
「シフォンも二人の帰る家になれるといいけどね」
両親との間を取り持つ事は出来ないけどお店に二人の居場所を作ってあげる事は出来る。
それぐらいしか私には出来ないけど。
「アヤミお姉様……」
「ありがとうな!」
歓喜極まった様子のリーフィと私を撫でるキース。
……ちょっと恥ずかしい。
リーフィとキースはすぐに出なければいけない様だったので荷物を纏めてすぐに出て行った。
そんなに遠い場所なのだろうか?
「アヤ姉……?」
「しばらくは二人で頑張ろうね」
やっぱ……寂しいかな。