乙女の嫉妬は鬱陶しい⑤
「凄い人なんだね」
まさかマスター達が王族だなんて思ってもみなかったよ。
隠してたのかな?
でも、みんな知ってるっぽいよね。
「あ、そろそろ授業が始まりますので行きますね」
「帰る時は気をつけて下さい」
「アヤミさんは一般人っすからね」
ぺこっと頭を下げながら心配そうにしてくれる三人に手を振り別れる。
確かに私じゃ何があっても勝てないからね。
呼び出しとかある時はクロスに助けてもらったり、シルクくん達に助けてもらったりしてるし。
やっぱ護身術程度には鍛えた方がいいかも。
ダイエットにもなるしね!
「貴女、ちょっとよろしいかしら?」
……いつから私はフラグ回収者になったんだろうか。
食堂を出ようとした私を引き止めたのは前にクロスを連れて行った(多分クロスを好きな)女の先生だ。
時々、殺気さえも感じる鋭い視線を送ってくるから覚えてしまうのも当たり前だよね。
本当に美人なのに勿体ない。
「申し訳ありません。 これから店の準備をしなければなりませんので」
「いいからさっさと来なさい」
なんて、言っても帰してくれるわけありませんよねー。
無理矢理連行されるのは嫌なので(怪我したくない)大人しくついて行く。
「私のクロスに近付かないでくれない」
呼び出しお約束の校舎裏でも屋上でもなくどこかの空き教室に連れて来られた。
言われた言葉はお約束だけど。
てか、貴方のではないでしょ。
「言ってる意味がわからないのですが?」
いや、意味はわかるけどさ。
「クロスは貴女みたいなブスが近付いていい人じゃないの。 私のような美人がお似合いなわけ」
まあ、確かに可愛いけど自分で言っちゃう?
「ただの友達です」
「クロスは優しいから貴女みたいなブスと一緒に居てあげてるだけなのよ。 ブスでデブで何も特技なんかない貴女から離れなさいよ」
人の話聞いてよ。
確かにブスでデブで何も特技なんかないかもしれないけど人の勝手じゃない。
……本当のことでもちょっと傷付く。
「調べたら孤児なんか育ててるんですって? そんなの私のクロスに近付けないで」
……そんなの?
「孤児なんて汚い者の側に居たら私のクロスが汚れるわ」
……汚い?
「残飯漁ったりするなんて家畜以下よ」
……家畜以下……。
私のことなら何を言われたって構わない。
だけど、私の可愛いアルフの悪口なんて言わせないっ!