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壊れた人形は後悔する




リーフィ side





「……はい、任務は大丈夫です。 家主は只今病に侵されてますので心配ありません。 ……わかりました、また次に報告します」




念話を止めれば後ろのドアがガタッと開いたのがわかり、私は侵入者の首筋にナイフを当てた。




「待て待てっ、俺だ俺!」


「あら、駄目兄貴……私の部屋を開ける時はノックをしろと言いませんでしたか?」


「忘れてただけだって!」




このまま首を切り落としたい気持ちになりながらも、仕方なくナイフを首筋から外してやる。

次、またノックしなければ今度こそ腕の1や2本切り落としてやりますわ。




「で、あっちは何だって?」


「このまま継続しろと言ってましたわ。 駄目兄貴、お姉様の様子は?」


「相変わらず返事なし。 任務がやりやすいって言えばやりやすいけどよ」




お姉様……。

病は病でも心の病は1番厄介。


お姉様は敵を殺してあの状態になってしまったと、一緒に居たクロス・リトリスが言ってた。

敵なんて殺すのが当たり前なのに……どうしてそんなに心を痛めてるのですか?





「それにしてもまだ“お姉様”って呼んでんのか? どうせ敵になるんだし……ああ、自分を慕ってたはずの奴がいきなり敵になったら戦意喪失するからそれを狙ってんのか? でも、アヤミが居なかったら呼んでも意味ないだろ?」




ケラケラと笑ってる駄目兄貴にイラッとすれば近付き思いっきりお腹を殴る。



「ぐおっ…!?」




確かに上げて落とす事は今までもやってきたけど。


身を隠す先を選んだのもお姉様が最近街に来たってわかってたからお姉様の所にしただけだし。

お姉様って呼んでるのは単に親しくなりやすそうだからそうしてるだけだし。


意味なんて……。




「まあ、アヤミがどうなろうと任務に関係ないだろ」



先ほど強めにお腹を殴ったのにピンピンしてる駄目兄貴の言葉にまたもやイラついてしまい今度は顔面に回し蹴りを喰らわす。




「ぐはっ……!?」




何度倒してるこの駄目兄貴は不死身なのだろうか。


だけど、お姉様はこんな駄目兄貴とは違う。

戦う術も戦う意志さえもない、ただの弱い女の人なのだ。

優しくて暖かくて私達が知らない母親のような、何も知らない無邪気な子供のようなお姉様。



任務に心は邪魔なはずなのに……。





「リーフィ、まさか情が移ったんじゃないか?」



“そんなはずない”……そう言いたいのに私の口は動いてくれない。

口が動かない代わりか心臓が嫌な音を立てて動いていた。





「情を移すな。 俺らは帝国の人形、移す情なんてないだろ」




そう、私達はただの壊れた人形。

帝国の命を受けてただ任務を全うするだけのマリオネット。

ただ、操られてるかのように任務をするのが私達。


……そこに私達の意志はない。




「……言われなくてもわかってますわ」



情が移ったわけではない。

だって私達は人形、移す情なんてないのだから。


でも、この胸の痛みはなんだろう?





「それならいいけどな」


「この私が他人に気をかけるなんてありませんわ。 やはり駄目兄貴は駄目兄貴です」



ぎゅっと手を握り締め、胸の痛みは気のせいだと思い込む。

この気持ちを認めてしまえば私は私ではなくなってしまうのだから。


……私達の生きる意味は復讐の為。

人間は醜い生き物、己の為なら汚い事に手を出しても平気。

この世に綺麗な人間なんて居ない。



お姉様だって醜い心が、自分勝手な望みしかないはず。




「頑張ろうな、俺ら兄妹が帝国のクソ共から自由を得られて復讐を果たせる時まで」



私が信頼してるのはこの駄目兄貴だけ。





「ええ、その時までしっかり働きなさい」




だけど





「わかってるって! ギルドで情報収集してるしな」




だけど




「なら、よろしいですわ」




ごめんなさい





「リーフィもギルドに行けばよかったのにな」




アヤミお姉様





「私には力仕事は似合いませんわ。 さっさと行きなさい」


「はいはい、じゃあ行ってくるな」




私は壊れた人形。

任務の為だから貴女に近付いた悪い女。


謝っても許されないのはわかってる。

責められても仕方ないのはわかってる。



だから、私を怒って責めて?



お姉様は笑顔が1番素敵なのだから。

早く元気になって下さいまし。



 

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