貴女の為に僕は泣く
アルフォレッド side
僕の名前はアルフォレッド・ファレス。
お父さんやお母さんが死んじゃってアヤ姉が僕を引き取ってくれた。
僕はアヤ姉が大好き。
優しくてご飯も美味しくて、独りだった僕を助けてくれたから。
でも、僕が捕まったあの時からアヤ姉の元気がなくなっちゃったんだ。
アヤ姉は戦うのが嫌い。
修行だって基礎を覚えたら止めちゃってすぐにお仕事に戻っちゃったし。
だから、クロス兄ちゃんに修行してもらった強くなったら僕がアヤ姉を守るの。
それが大好きなアヤ姉への恩返しにするつもりだったのに僕は捕まってしまった。
首に付けられた首輪に魔力を吸い取られて逃げる事も出来ず、みんなを励ましながらも僕は助かるのを正直諦めてた。
でも、アヤ姉は助けに来てくれたんだ。
アヤ姉は戦うのが嫌いなはずなのに僕を助ける為だけに来てくれて、怖かったはずなのに鍵を開けてぎゅって僕を抱き締めて頭を撫でてくれた。
僕は嬉しかったけど悔しかった。
アヤ姉を守るはずだった僕がアヤ姉に守られたから。
まだ弱い自分が嫌になった。
僕はアヤ姉を守れるくらい強くなった気でいたんだ。
クロス兄ちゃんに褒められて、Cランクになって、僕は守られる子供じゃないと過信していた。
それが仇となったのがあの日の出来事。
僕が力を過信してしまって捕まったからアヤ姉の元気がなくなっちゃったんだ。
アヤ姉はあの時壊れてしまったかのように叫んで糸が切れたように倒れてしまった。
クロス兄ちゃんが言うには初めて人を殺したから動揺してるだけって言ってたけど、アヤ姉の元気はまだない。
人形のように無表情だし、ベッドに座って空をずっと見上げてる。
アヤ姉が何を考えてるのかは僕にはわからない。
だけど、アヤ姉が苦しんでるのなら僕は助けてあげたい。
アヤ姉が泣きたいのなら僕も一緒に泣いてあげたい。
独りで苦しまないで、独りで泣かないで。
「アルフォレッド」
「クロス兄ちゃん……」
「アヤミの様子はどうだ?」
クロス兄ちゃんは毎日顔を見せに来てくれてる。
前も来てたけど1日に何回も顔を見せに来るのは今回が初めて。
やっぱりあの時の事気にしてるのかな?
「昨日と同じ。 生きてるけど僕の方を向いてくれない……魂のない人形みたいな感じ」
アヤ姉が僕を見てくれないのは悲しい。
話す時はちゃんと目を見て話してくれるアヤ姉だから、そんなアヤ姉が大好きだから。
「アヤミは戦う術を持つのを嫌がってたからな。 それが心を壊すまでだとは思って居なかったが……」
クロス兄ちゃんもアヤ姉が大好きなんだね。
クロス兄ちゃんがアヤ姉を見てる目が悲しそうな色してるよ。
「俺は今からギルドに行くがどうする?」
「僕、アヤ姉の傍に居る」
アヤ姉の元気がなくなってから僕はギルドには行ってない。
僕のせいでアヤ姉がこんな風になってるのにギルドになんて行けるわけがない。
リーフィ姉は行っていいって言うけど僕がアヤ姉の傍に居たいんだ。
ずっと話しかけていたらアヤ姉が反応してくれるかもしれないから。
「じゃあ、俺は行く」
クロス兄ちゃんの声が聞こえればパタンとドアが閉まった音がした。
ギルドには行きたい、僕は強くならなきゃいけないんだから。
だけど、強くなる事よりアヤ姉が元気になる方が1番いいの。
だから、僕は行けない。
「アヤ姉、クロス兄ちゃんが心配してくれてるよ? リーフィ姉もキース兄ちゃんもアヤ姉の事を心配してくれてるんだよ。 アヤ姉が今までどんな暮らしをしてきたのかわからないけど、アヤ姉が戦いたくないなら僕がアヤ姉を守るから……だから、元気になって」
ポロポロと僕の目から涙が流れてるのを感じる。
アヤ姉が元気になるなら僕は何をしてもいいから。
僕の元気をアヤ姉にあげてもいいから。
だから、神様。
アヤ姉を元気にして下さい。