まずはギルド登録③
「私は死にたくないです。 生き物を殺していいのは死ぬ覚悟をしている人だけだと言われた事があります。 私は死にたくないですし、戦うのが怖いです」
チキンなんだ。
全ての人間が戦えると思っているの?
まあ、確かに小説でも転生した主人公はみんな戦ってるけど。
私は戦えない。
死にたいって思った時はあった、手首を切れば死ねるって思った時もあった、飛び降りたら死ねるって思って下を見た時もあった。
だけど、私には死ぬ勇気はなかった。
思うだけで悲劇のヒロインぶりたかっただけなんだ、本心では死にたくないのに。
だから、私には殺すなんて無理なんだ。
死にたくないから。
「死ぬ事が怖くない人間なんて居ないよ。 皆が皆、恐怖心を持ったまま戦っているんだ。 君は力を持っているのに逃げようとしているっ」
「アヤ姉を苛めないでっ」
だんだん声が大きくなってきたギルドマスターに反応したのかアルフが私の前に立つ。
…身長の違いからあんま意味ないけど。
「苛めてるわけでは……」
流石のギルドマスターも幼いアルフには何も言えないみたい。
こんな小さなアルフには戦闘なんて関係ないからね…。
イケメンだけどギルドマスター嫌いになりそう……。
「何騒いでいる」
またイケメンが来た。
今度のイケメンは赤髪短髪で同じく赤い瞳。
適度に筋肉がついていて細マッチョ的な感じがする。
キリッとした顔に黒縁メガネ……知的系なイケメンだ。
身長も180はあるだろう。
「ゼイル……」
先ほどとは違い困ったような表情でイケメンを見ているギルドマスター。
ゼイルって事は商業ギルドのギルドマスター?
双子って聞いたけど赤髪赤目以外似てないね。
戦闘ギルドのマスターが軟派なイケメンだったら商業ギルドのマスターは硬派なイケメンだ。
「俺に用があったならすぐに来ればいいだろう」
「けど、ゼイルもわかるよね? この子には力がある、それは平和の為に使うべきだって!」
「嫌がって居る子供に無理をさせるのは感心しないな。 暴走しないように少し鍛えるべきだとは思うが無理矢理戦わせる事はない。 死んでしまうのがオチだ」
商業ギルドのマスターはわかってくれそう。
だけど、私は子供ではない。
今にも戦闘ギルドのマスターに飛びかかりそうな涙目になっているアルフの手を握り締めながら思う。
「そうだけど、今は人手が足りないっ。戦力になりそうな人は女子供関係なしに出てほしい。 ……死なせたくはないけど」