誘拐事件発生⑪
本当なら拳銃なんて作りたくない。
だけど、攻撃出来てクロスじゃなくて私を警戒させれる物なんてこれしかない。
手にずっしりと重い物があるのを感じればそっと目を開ける。
男は弱い私よりクロスを警戒してるのか私に背を向けていた。
チャンスは一回。
後ろ手で引き金に指をかければ軽く息を吐く、失敗すれば私は死ぬかもしれない。
威嚇するだけだからなるべく腕とか足に当たって欲しい。
私は拳銃を男に向ければ引き金を引いた。
「ぐぁあっ!」
パァンッと音が鳴れば反動に耐えられず私の身体は地面に倒れる。
そして、響く男の苦痛に歪んだ悲鳴。
背中をぶつけて痛いが何とか身体を起こして見る。
すると、男の脇腹から血が流れてるのが見えた。
弾が当たったのは左だったので右側に居たアルフは無事だったみたい。
「このクソアマッ!」
痛みによりアルフを離してしまったのか脇腹を押さえながら私を睨み付ける男。
アルフは戸惑いながらクロスの方に逃げてるのが見える。
……よかった。
「まずはテメェから殺してやるよっ!」
ポタポタと血を流れさせたまま男は一気に私に近付いてきた。
私は腰が抜けてしまって動けない、クロスは固まっていたのか慌てて魔法を撃とうとしてる。
「死ねぇ!」
男は小型のナイフを振り上げてる。
死にたくなんかない。
でも、腰が抜けて動けない。
ならば、どうすればいいのか。
――――そうだ。
コロサレルマエニ
コロシテシマエバイイ。
パァンッと2度目の銃声が響いた。
ドサッと男の身体は地面に倒れた。
胸に空いた穴からは血が流れ地面にと広がっていく。
「ぐっ……こ、アマ……」
虫の息だが男はまだ生きていたのか私を睨んでくるが今の私はそれ所ではなかった。
戸惑いもしなかったのだ……いや、むしろ自分から殺そうと思った。
私は医者ではないけどこの血の量を見ればわかる。
この男はもうすぐ死んでしまう。
私が殺したんだ、人を。
人を殺すなんて悪い事。
悪人だったとしても死んでいい命なんてないはず、生きてなきゃ罪は償えない。
例え偽善者だと言われようが私は……私はっ!
「嫌ぁぁああああああっ!」
死にたくなかったっ!
殺したくなかったっ!
私はただの偽善者だっ!
「アヤミッ!」
「アヤ姉っ!」
何でっ、私が人を殺すなんてっ!
「アヤミ、落ち着けっ!」
「アヤ姉っ、アヤ姉ぇっ」
手が血で汚れてる……。
私は汚いっ、自分が死にたくないから人を殺したなんてっ!
私はっ……私は人殺しになったんだ!
「俺を見ろ!」
「アヤ姉っ、僕を見て…!」
……何も聞こえない、何も見えない。
人殺しの私なんて生きてる価値なんかない。
こんな、こんな世界……。
「来たくなんてなかった」
もう、どうでもいい。