落とし者拾いました②
「酷い奴だ」
「ええ、そうです。 いい加減に離さないと強盗として騎士に突き出しますよ」
私の言葉が効いたのか知らないが男(声からして)は手を離してくれた。
そして、何か言われる前にドアを閉める(鍵も忘れずに)
「……開けてくれ」
「嫌です」
知らない人を家に上げることは出来ない。
何せあの力、碌に修行をしていない私では何かあっても適わないだろう。
まあ、本当に悪い人ならドアを壊してでも入って来るだろうから悪い人ではないだろうけどね。
「ちょっと待って下さい」
ドアを閉めてもまだ外に居るようなので仕方ない。
まだ残りのご飯があるしオニギリぐらいだったら作れるだろう。
そうと決まればすぐにオニギリを握る(梅と鮭とおかかを入れた爆弾オニギリ)
……結局甘さを捨てられないな。
オニギリはすぐに出来たので(サッカーボール並み)ドアを少し開ける。
ドアが開いたのに押し入って来ないのを見ればお腹が空いてるから動けないからなのか本当に悪い人ではないかのどちらかだね。
ドアの隙間からオニギリを差し出せばすぐに立ち上がり取られた。
本当にお腹が空いていたみたい。
「それでは……」
ご飯も食べさせてあげたしもういいだろう。
食べたらすぐに帰ると思いまたドアを閉めようとしたが、またドアを掴まれた。
「ごちそうさま、美味かった」
「ありがとうございます。 まだ何かご用ですか?」
……梅は種も入っていたのに食べたの?
呑気に話しているように見えるが私は力いっぱい閉めようとしている。
「(どれだけ力があるんだろう?)」
「最近この街に来たんだがなかなか働き口が見つからず空腹で倒れたんだ」
「それで?」
男の人ならばバイトぐらいたくさんあるんだろうに……。
何か譲れない条件でもあって決まらなかったのかな?
「ここで働きたいのだが駄目だろうか? 給料は低くて構わない」
譲れない条件なんてないかもしれない(あっさり決めるんだもん)
まだ1時間ぐらいしか話してないし。
ってか、ドアが少ししか開いてないからまだ顔も見れてないんだけど。
「何故ですか?」
「働きたいからだ」
答えになってない(いや、ある意味答えにはなってるけど)
この店で働きたい理由を聞いたはずなんだけどな……。
「ただ働きたいだけなら他の店に行って下さい」
確かに従業員は欲しかったけど変な人はもういらない。
「嫌だ、この店は暖かい。 料理人ならば例えお金がなくてもお腹が空いてる人が居れば食べさせるはずだ。 だが、この街にはそんな料理人は居なかった」