トラブル終了④
エスメラルド様は一応まだ伯爵夫人なので、他の犯罪者みたいに牢屋に入れることは出来ず貴族の犯罪者専門の部屋に居るらしい。
スチュアートさん曰く牢屋みたいに鉄格子はなくてちょっと豪華な部屋で逃げないように見張りをつけてるみたい。
「まず俺から入る。 お前らは俺が呼んだら来い」
他に見張りの方が居るのでスチュアートさんは仕事モードに入っているのか口調が仕事用に変わっている、私たちは何があるかわからないので部屋の前で待機する。
中からスチュアートさんの声は聞こえるんだけども、エスメラルド様の声は全く聞こえない。
話すつもりがないのか、昨日から飲まず食わずみたいなので話す気力がないのか、私には全く分からない。
「アヤミ・ファレス、入れ」
スチュアートさんに呼ばれたので私とアルフは一緒に部屋の中に入る。
部屋の真ん中にある椅子にはエスメラルド様が座っていたけどもしっかり眠れていないのか目の下には隈があり、疲れた様子だった。
私とアルフが入って来たのに気づいたのか驚いた表情のエスメラルド様は私を見ているのか、それともアルフを見ているのか……。
「ミリィ?」
「初めまして、アルフォレッド・ファレスです」
アルフがぺこりと頭を下げて挨拶をすればエスメラルド様は何かに納得したように頷きながらアルフを見つめている、そんなにミリアリアさんにアルフが似ているんだろうか。
エスメラルド様はふらりと立ち上がればアルフの前に移動し、床に膝をつけばぺたぺたとアルフの顔を触っている。
アルフはそんなエスメラルド様に何も言わずにされるがままになっていた。
「……ミリィにそっくり」
「お父さんからも言われました。 アルフはお母さんにそっくりだなって」
嬉しそうな笑みを浮かべながらもアルフはエスメラルド様と会話をしている、エスメラルド様も会いたいと言っていたアルフに会えたのが嬉しかったのか笑みを浮かべる。
その時、エスメラルド様の目からぽろぽろと涙が零れ落ちてきた。
「……私はディサンダ様のことが小さい時から好きだったの……でも、あの方が選んだのは妹のミリィだった。 悲しくて悔しくて……ミリィなんて居なくなっちゃえってずっと思って……。 だから、私は家を追い出されたミリィを引き止めることはしなかった、これでディサンダ様と結婚出来る、ミリィより私の方がいいって思って貰えるって……。 でも、だから神様は私に罰を与えたのね……家族を恨んだ私に、ミリィを不幸にしてしまった私に……ごめんなさい……ごめんなさい、ミリィ……」
エスメラルド様は涙を流しながらもぽつぽつと今までのことを後悔するように語り始めた。
ミリアリアさんに似ているらしいアルフとミリアリアさんを重ねて見ているのか、アルフの顔に当てたままの手は震えている。