従業員を増やそう④
「ゼイルは友達想いやし、優しいし、強いねんで。 俺らの学年では常にトップやったからギルドマスターになったんも頷けるわ」
もう何も聞きたくない。
ギルドマスターが連れて来てくれたのは前の時に来た部屋だった。
男の人は部屋に入るとすぐにソファに座り、ギルドマスターは下の騒ぎを治めに行った……んだけど……。
「お嬢さんもそう思うやろ?」
流石にさっき会ったばかりの人の隣に座ることなんて出来ないので目の前に座れば、キラッキラとした目でギルドマスターの良さを語られる。
ギルドマスターが行ってからもう一時間は経ってるけど、ずーっと子供の時の話から学生、一緒に旅した話、何度か同じ事を言われながら語られる。
しかも、私が喋る暇なしのマシンガントーク。
相槌を打つぐらいしか出来ない。
「(ギルドマスター、早く帰ってきて下さい)」
ウィルさんでもいいから来てっ。
「ああ、俺とした事がゼイルの素晴らしさを語る前に自己紹介するん忘れとったわ」
私が遠い目をしていたのに気付いてくれたのかにこにことしたまま話す男の人。
……ギルドマスター大好きさんでいいんじゃないかな。
助けてくれた(余計悪化させただけかもしれないけど)んだから何も言いたくないけど、加減を知ってほしい、
「(一時間も語っていながら自己紹介したらまだ語りそうだもん)」
「俺の名前はクレード・ボルギルフや。 ゼイルとは幼なじみっちゅーわけで仲良しやねん」
「あっ、私はアヤミ・ファレスです。 この街で喫茶店をやってます」
うーん、喫茶店で通じるかな?
通じないって思ってたから使わなかったけど、今思えばレストランは使われてるし。
食べ物屋よりは喫茶店って言った方が言いやすいし。
「アヤミはゼイルとはどんな関係なん?」
あっ、喫茶店は通じるんだ。
……って、なんか空気が寒いような感じがする。
これほど鈍感であってほしいと思った事はない。
先ほどまでにこやかだったボルギルフさん、今もにこやかにしているけど目が冷たい。
BLフラグ?
「ただのギルドマスターと喫茶店店長ってだけです。 今の接点もマスターの使い魔であるウィルさんが店の常連なだけですし」
別にギルドマスターが好きだとかそんな気持ちはない。
イケメンは見てるだけで満足。
好きになったら付き合いたいけどそれ以外で関わると周りが五月蝿いからね。
「……好きってわけやないねんな?」
「はい、話すのもこれで2回目ですし……顔だけで好きになりません」
これも本当。
ハーレムメンバーは顔だけ見て好きになってない?っていつも思ってるし。
普通は話して仲良くなったら好きになるでしょ。
まあ、助けられて好きになるってのも王道だけど。