エスメラルド⑥
「アヤミの体に傷をつけるとは……」
「いや、これは自分でやったけど」
「アヤミをそんな怪我を負わせる状態を起こしたことすら許されない」
無数に傷はあるけどほとんどは薄皮が一枚切れたような感じだからあまり痛くはないんだけど……ちょっとひりひりするくらいなだけで……。
クロスはちょっと大げさの時があるけど、それは私を心配してくれてるからなんだよね。
「まあ、私も今回の誘拐犯は許してないよ、犠牲にあったのがアルフだって言うんだからね。 いや、他の子だから誘拐が許されるってわけじゃないけど」
「あの女がギルドにあいつらを縛って引き連れて来たのにはギルドも騒然としていたな」
三人もの男をか弱そうなリーフィが縛って連れてきたらギルドはざわついて仕方ないと思う。
あんなに可愛いのにリーフィは強いからね、見た目からしたらあんなに強いだなんて思わないだろうから油断すると思うし。
「それはそうだよね」
「ああ、男らが暁の牙のメンバーだったから余計にだな」
暁の牙……?
何かどっかで聞いたことがあるような名前のような気が……。
「アヤミ、さっき来てただろ」
「ああ! あの王子っぽい見た目の人!!」
そう言えば暁の牙のメンバーだって言ってたような気がする!
え? じゃあ、あの時の話し合いは私たちの気をそらす為の囮だったってことなわけ?
うわー、それなら私ってば簡単に騙されたんじゃない?
戦いを止めてくれたり、私の言葉に理解してくれたりしたのが演技だったのなら信じてしまった私が馬鹿だったってことかな……。
「やっぱ、あの時警備隊に突き出しとけばよかったな」
「あの時?」
ああ、あの時はクロスは居なかったからお店に襲撃があったことは知らないよね。
帰って来たのもついさっきだし、リーフィはクロスがあまり好きじゃないみたいだからわざわざお店が襲撃されたことなんて言わないだろうし。
うーん、二人には仲良くして欲しいんだけどね。
まあ、好き嫌いなんて人にはあるんだから強要するつもりはないけど。
「今日の営業終了した時に八人くらいに襲撃されかけたんだよね。 その襲撃しようとしてたのも襲撃を止めたのも暁の牙の人だったんだよ」
「……そうか」
「でも、アルフを誘拐したのも暁の牙の人ってことは全部組まれてたのかな」
身の危険がある世界ってのはわかってたんだけど、こうも騙されるなんて思っても居なかったからね……。
んー、でもこれから会う人会う人ずっと疑っていくのもあれだし……これからのことはもう少し後で考えようかな。
私一人で考えて居ても仕方ないし、ここには頼りになる人はたくさん居るからね。