貴族の事情⑧
「……二人とも気をつけてね」
二人の邪魔をしないようにお店の中に入ろうとすると襲撃者たちが動こうとしているのも探知能力でわかる。
……こんな時間から街中で襲撃しようなんて馬鹿の考えることね。
「止まれ」
私がお店の中に入ろうとすると8人とは別に2人の反応が近付いてきた、1人は昼の時に来てた女の冒険者ともう1人は初めて見る男の人だ。
明るい金髪でどこか漫画の中の王子様を沸騰させる青い瞳、腰には綺麗な装飾がついた剣があるみたい。
誰かは知らないけど、あの女の人と一緒に居るってことはあっち側の人間なんだろうけども。
「……アヤミお姉様、あれは暁の牙ってギルドメンバーのリーダーですわ」
「え? あの人が?」
あの王子様っぽい人があの迷惑な冒険者二人のリーダーなの?
確かにあの女の人もあの男の人に従ってるみたいだけど……どうなってるのかもうよくわからないよ。
「街中で強盗しようとしている奴らが何言ってるんだ」
「は? 俺らは強盗じゃ……」
「ユルリ、お前は黙っていろ」
私たちのお店を囲んでいた男たちは王子っぽい人が現れてからその人の周りに集まっている、ユルリと呼ばれた昼間の冒険者の男は王子っぽい人に止められて不機嫌そうにしながらも黙った。
リーダーって言うだけあってこの男の人には逆らえないみたいだね。
「もちろん、訳を聞かせて頂けるんでしょう? いきなり襲おうとしているたんですもの、警備隊に通報されないだけマシだと思って下さいね?」
「ああ、もちろん。 ユルリとエイフィーは俺と一緒に残って他はホテルに戻っていろ」
王子っぽい人の言葉に何か言いたげな表情をしながらも他の七人の男たちはここから去って行った。
あんな人たちが居たら近所の方に何て思われるかわかったもんじゃないもんね。
まだ囲まれていただけで危害は加えられてないから騒ぎにはなってないでしょうし。
「リーフィ、キース、ここじゃなんだから……」
「ええ、こいつらが何かしてきても私がアヤミお姉様には指一本触れさせませんから安心して下さい」
「アヤミ、俺が案内するから先に戻ってアルフとレイファに席を外すよう言ってろよ。 何となく予想は出来るからな」
キースが何に気づいたのか私にはわからないけど、キースが珍しくそう言うんならレイファにお願いして出掛けててもらおうかな。
私はキースとリーフィに招かざる客である三人のことを任せてレイファとアルフが心配しないように先に店の中に戻った。
レイファとアルフは囲まれていたことに気づいていたみたいで説明して納得してもらうことがちょっと難しかったな。