貴族の事情⑤
「いらっしゃいませ」
昨日は急遽休んでしまったせいか今日はちょっと忙しいような感じがする。
でも、常連さんが居てくれることはありがたいことだから忙しい方がいいね、アルフも頑張って働いてくれてる。
カランッと入口のドアが開いて入って来たのは冒険者のような恰好をした男女の二人、冒険者の人も良く来てくれるけどこの二人は初めてのお客さんだね。
「いらっしゃいませ。 これメニューです」
「ありがとう」
アルフが来店した二人にお水とメニュー表を笑顔で差し出している、冒険者の女の人はアルフからメニュー表を受け取るとちらっと私の方を見た気がした。
でも、すぐにメニュー表に視線を向けたからもしかしたら気のせいかも。
「アルフ、水分はちゃんと取ってる?」
「うん、アヤ姉がいつも言ってるからちゃんと飲んでるよ」
「じゃあ、もう少し頑張ってね。 休憩入る時にレイファに頼んだら何か作ってくれるから」
アルフがにこにこと私の方に戻って来たので問いかける。
毎日聞いてることではあるけども最近はちょっと暑くなってきてるから熱中症になったら大変だし、クーラー効いてる部屋でも熱中症になるって聞いたことあるしね。
本当にネットの情報で聞いた程度だから合ってるかどうかもわからないけど、注意しておくのは大事だからね。
「うん、でも僕ばっかじゃなくてアヤ姉も気をつけてね!」
「大丈夫よ、ちゃんと私も気をつけてるからね」
ちゃんと適度に水分補給もしてるし、最近はレイファがキッチンばっかだから腕が鈍らないかってのは心配するけど……。
アルフと話していると先ほどの冒険者二人組が呼んでるので注文を聞きに行く。
「はい、ご注文をお伺い致します」
「このケーキセットを一つとコーヒーを一つ下さい」
「かしこまりました、ケーキセットが一つとコーヒーが一つですね。 少々お待ち下さいませ」
にっこりと営業スマイルを浮かべながらも注文を繰り返し、お辞儀をしてから離れる。
ケーキはすでに準備してるから紅茶とコーヒーを準備すればすぐに用意は出来るからね。
アルフに少しだけお店を任せると私はレイファが居るキッチンの方に向かう。
「アヤミさん、注文っすか?」
「うん、私はコーヒーの準備するから紅茶をお願い」
「了解っす」
キッチンではレイファがのんびり座っていたのでレイファに紅茶をお願いして私はコーヒーを入れることにする。
コーヒーの種類もそんなに詳しいわけじゃないから一種類しかないんだけどね、時間があれば勉強するのもありかな。
「勝手なこと言わないで!」
お客さん出す準備をしているとお店の方からアルフの声が聞こえて来た。
私はレイファい後のことを任せてすぐに店に戻る。