ある日の出会い④
「あら~、ごめんなさいね~。 さあさあ、座ってちょうだいよ」
「はい?」
ぎろりと睨まれていたかと思えばすぐに聞こえた野太い声にぎょっとしてしまう。
先ほどまでの無表情とは違いにこにこしてるけど……厳つい顔でにこにこしてても怖い……。
「今から話すことはマイヤちゃんには内緒なのよ! 私たち”転生者”だけの、ね?」
案内された椅子に座ると対面にはにこにこしたままの男の人が座った。
この人も転生者……ってことはもしかしてオネエさん?
「貴方も転生者なんですか?」
「そうよ~! ロバート・スチュアート、それがあたしのな・ま・え!」
「改めまして、アヤミ・ファレスと申します」
何だかオネエさんってだけでちょっと怖さがなくなってしまったのはよかった。
……ある意味では怖いのかもしれないけど……。
「アヤミちゃん、よろしく~! 前々からアヤミちゃんのことは知ってたから早く会いたかったのよ。 だけど、あたの立場上中々会いに行けないのよね~」
「私ってそんなに目立ちますか?」
私的には静かに目立たないように暮らしていたつもりだったんだけど……。
色々事件に巻き込まれたりなんやりしてたからちょっと目立っていたのかもしれない。
「あら、何言ってるのよ。 カカオがないのにチョコケーキ作ったりこっちでは見たことない料理作ってたら日本人なら誰だってわかるわよ」
あ……それは全く考えてなかった、こっちの料理を見ることなく喫茶店始めたからまんま日本の喫茶店だからね。
初日にレストラン行こうとしたけど、トラブルがあって結局は行けてないし、その後も外食する機会なんてほとんどなかったしね。
「それはそうかもしれないですね……」
「まあ、そのおかげであたしは美味しいデザートが食べられるから嬉しいんだけど」
ああ、最近はお持ち帰り用とかも作ってるからそれを買って下さっているのかな。
リーフィとキースが戻ってきたらお休みも増やせてあげられるからいいんだけど……。
「えっと、スチュアートさんは昔から記憶があった系ですか?」
「もう、そんなわけないじゃない~。 あたしに記憶があったらこんなとこで働いてなんかいないわよ」
ってことは、レイファと同じで後から記憶が目覚めた系ってことか。
転生者でもこっちで生まれて初めから記憶がある人、こっちで生まれたけど記憶が途中から目覚める人、私と同じで日本産の体でこっちに来た人と様々だからね。
神様も女神様だったり男の人だったりおじいさんだったりしてるみたいだから神様の世界でも何かあるのかな?
「日本では何をしてたんですか?」
「うふ、実はメイクアップアーティストだったのよ。 記憶が戻った時にはこっちの化粧品を見てショックを受けたわ。 お肌に駄目なのが入っていたもの」