戦争の予感③
「相田さん、どうかしましたか?」
「ファ、ファレスさんはこいつを誰か知ってるんですか!」
驚いたようにレイファを指差しながら少し震えている相田さん。
……もしかして、レイファが帝国の元皇子だってバレてるのかもしれない。
相田さんは元々帝国スタートって言ってたからレイファの顔を知っていてもおかしくはないもんね。
「相田さんはレイファのこと知ってるんですね」
「……ええ、最近は特に帝国内で騒がれてますから」
やっぱり皇子が突然居なくなるなんて騒がれてもおかしくはなかったか……。
皇帝の座をレイファは望んでないんだからこのままそっとしといて欲しかったんだけどね。
戦争も始まるっぽいし……しばらくレイファには家で引き籠っていてもらった方がいいかな、他にもレイファの顔を知ってる人が来るかもしれないし。
「そっか」
「ファレスさんの価値観ではこんな奴すぐに通報するかと思ってましたが……何か脅されてるんですか?」
レイファが前の性格のままだったら人を普通に脅すと思うけど、現実だってわかってまともになったレイファなら脅そうとはしないでしょ。
ああ、でもその事を相田さんは知らないから心配してるのかも。
レイファの前を知ってるなら改心したとかあり得ないって思うかもだし……。
「……アヤミさん、多分話が噛み合ってないっすよ?」
「え?」
「多分、この人が言ってるのは俺が”元皇子”だからじゃないっぽいっす」
元皇子だからじやないっぽいって?
でも、それ以外に相田さんがレイファのことを知ってる理由がわからないんだけど……?
「え? 元皇子って……?」
「相田さんはレイファが帝国の皇子って知ってるんですよね?」
「えっ、帝国の皇子!?」
あれ? 相田さんの様子からしてもしかしてレイファが皇子だって知らなかったみたい?
でも、じゃあ……何で相田さんはレイファを見て驚いているんだろう?
レイファが皇子だって知ってるから驚いているのならまだわかるけど……。
「えーと……とりあえず、座ってお話ししましょう」
「あ、はい……」
何で忘れていたのかわからないけど、相田さんって尻餅ついたままだった。
相田さんも尻餅ついたことが恥ずかしいのか気まずそうにしながらも椅子を戻して座った。
私とレイファも相田さんの前に座る。
「相田さんはどうしてレイファを知っているんですか?」
「帝国の皇帝が決まったのは知ってますか?」
「はい、次期皇帝は第二皇子で他の皇子は病気で亡くなってしまったと」
病気じゃなくて跡目争いの末に殺されたんだろうってのは多分誰もが予想はついてるだろうけど。
でも、帝国が他の皇子を殺しました、なんて大々的には言えないよね。




