戦争の予感
「シーマさん、お久し振りです」
「アヤミちゃん、久し振りね。 お店は大丈夫なの?」
「はい、従業員も増えましたので今日は私が雑用係です」
嫌がらせもなくなり、シフォンの悪い噂もなくなったので毎日を忙しく過ごしていた。
たまに我儘を言う貴族の人が居るけど、その人たちはコーネリアちゃんの一喝ですぐに大人しくなるからありがたい。
権力を悪用してるみたいで何か罪悪感を感じてしまうんだけど、悪いのは相手だからね。
「楽しそうでよかったっわ。 そうそう、最近は物騒な噂ばかりだからアヤミちゃんも気をつけてね?」
「噂、ですか?」
「そろそろ帝国との戦争が始まるみたいなのよ。 それで、ガラの悪い男たちが増えてるみたいで……」
帝国から戻ってきてもう数か月経ったけど、聞いた話ではもう次期皇帝が決まったらしい。
……今の次期皇帝は第二皇子でその第二皇子以外の皇子は病気で亡くなってしまったとも一緒に聞いたけど……。
どう考えても跡目争いで殺されてしまったんだと思う。
レイファは早めに隠れて逃げたから無事だったけど、あのままだったら絶対に殺されてたよね。
「それは危ないですよね」
「イートンさんの所、酔っ払いに暴れられて酷い有様みたいよ」
イートンさんはギルドの近くにある酒場の店主さん、長身だけどひょろっとしてて争い事はあまり得意ではないらしい。
元々はイートンさんのおじいさんがやってたお店でおじいさんは元軍人の人だから危ないギルドの近くでも問題なかっただろうけど、跡を継いだイートンさんは大変だよね。
「暴れた人たちは……?」
「もちろん、警備隊の人が連れて行ったさ。 前は警備隊も態度が悪かったんだけど、最近は良くなってきたね」
……お金に釣られて嫌がらせしてくる警備隊の人だったからね、評判も悪かったんでしょ。
良くなってきているならそれはレファール隊長さんのおかげだよね。
今度差し入れでもした方がいいかな?
「あっ、アヤミさん!」
「相田さん、お久し振りです」
シーマさんんと話していると馬車に乗った相田さんがいた。
本当なら相田さんの能力なら馬車なんていらないんだろうけど、流石に転移がバレてしまったら大変だからカモフラージュしてるみたい。
「あら、アヤミちゃんったらクロスくんが居るのに隅に置けないわね」
「違いますよ。 彼はアルドラにある宿の店主さんで手に入った珍しい食材とかを持ってきて下さるんです。 しかも、彼はお嫁さんも居ますから」
「アヤミちゃんの傍にはいい男ばかりだからね~」
……まあ、悪い人は居ないけど……。
でも、アルフを育てなきゃだから恋愛する気はないんだよね。




