悪女は婚約破棄をする?⑲
「そんなわけ……」
レイファの言葉に小さく首を振る桃色の子は信じられないのか呆然としてる。
夢だって思ってた方が楽しかったと思うけど、魔物だって居るんだから死ぬかもしれないし、早めに現実ってわかった方がいいでしょ。
「アヤミさん、帰りましょう? 信じない奴に何言っても無駄っすから」
「うん……」
注目なんて浴びる気はなかったのにまさかこんなことになるなんて思ってもみなかった。
ちらっと桃色の子を見るとまだ呆然としたまま稀に聞こえるのは彼女の「嘘だ」って言葉だけ。
私はその言葉を背にクロスたちと一緒に会場を出て行った、もう彼女に会うことはないかもしれないけど、彼女が現実に気づくのを願ってるよ。
私たちと同郷の可能性が高いからね。
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「……アヤミさん、申し訳ありません」
「え? どうしたの?」
会場から出たのはいいけど、このままでは帰られないので今は馬車待ちである。
ドレスのままで街中を歩くなんて私には無理だからね。
コーネリアちゃんとクロスたちが戻ってくるのを待っているとコーネリアちゃんが本当に申し訳なさそうにしてる。
別にコーネリアちゃんが謝ることなんてないのに……。
「気にしなくていいんだよ。 コーネリアちゃんのせいであんなことになったわけじゃないんだしね」
「でも……」
「大丈夫、それより婚約破棄されてよかったね」
コーネリアちゃんは本当に婚約破棄したかったみたいだし、信号機くんがあんなに酷いとは思ってなかったけど……。
あれだったらコーネリアちゃんが別れたがっていた気持ちがわかりそうだよ。
「正式な婚約破棄ではありませんが、向こうから申し出てくれましたので正式に破棄も出来るでしょう。 帰ったらお父様に報告します」
「それがいいよ」
家と家の婚約だって言ってたけど、信号機くんは本当に酷かったからね……。
お兄さんが信号機くんを選んだのは何でだろう?って疑問に思っちゃうよね。
「おーい!」
貸馬車を呼んできてくれたのか馬車に乗ってるクロスとレイファが見えた。
「今日はアヤミさんを家まで送ってから私は家に帰りますね」
「馬車に乗ってるけど、一人で帰って大丈夫?」
「もちろんです、私も学園の生徒。 自分の身を守ることぐらいは出来ますよ」
もしかしたら、魔法が苦手な私よりも強い可能性があるよね。
仕事の合間に練習する私よりも頑張っているから当然かもしれないけど。
私たちは馬車に乗り込みやはり最初にコーネリアちゃんを送ることにした。
夜道は危ないし、何があるかもわからないからね。
コーネリアちゃんを送ってから私たちは家にへと馬車で向かってもらった。
明日もお店を開けるんだから頑張って早く起きないとね。




