悪女は婚約破棄をする?⑰
「今更後悔してももう遅い!」
……コーネリアちゃんが震えてるのは後悔してるからじゃないと思うんだけど。
俯いて顔が見えないコーネリアちゃんは傍から見たら婚約者に婚約破棄をされたから泣いてるように見えてるんだろうね。
実際は嬉しそうにしてるのが私にはわかるよ。
「……婚約破棄でございますか」
「ああ、貴様みたいな女よりアイリーンが俺の嫁に相応しい」
「かしこまりました。 すぐにお父様にご報告して速やかに正式に婚約破棄して参ります」
顔を上げたコーネリアちゃんは誰もが見惚れそうなくらいとても綺麗に微笑んでいた。
信号機くんたちもコーネリアちゃんの反応を想像もしてなかったのかぽかんとしてる。
「アヤミさん、私は急いで家に戻りますがアヤミさんはどう致します?」
「あー、じゃあ、私ももう帰ろうかな」
「ええ、そうしましょう」
婚約破棄されてイキイキしてるコーネリアちゃんは可愛いけど、周りの人はそんなコーネリアちゃんについて来れてないみたい。
泣いてるって予想してたのにすっごい嬉しそうにしてるんだもんね、コーネリアちゃん。
「なっ、何を……貴様は俺が好きなのではないのか!?」
えー、何言ってるの?
最初に出会った時も思ったけど、あんなことされて好きって思えるほど馬鹿な女は居ないでしょ。
コーネリアちゃんは最初っから家の為に婚約してたみたいだし。
「はい? そんな事実は一つもございませんが?」
「は?」
「私はディアス様に恋愛感情を抱いたことは今まで一度もございません。 お兄様が決めた婚約だから従ったまでです」
まさかとは思うけど、コーネリアちゃんはずっと自分が好きだって勘違いしてたの?
コーネリアちゃんから擦り寄って行ってたらそう思うのは仕方ないかもしれなけど……実際は婚約者としてのことしかやってなかったみたいだし。
自意識過剰って言うか何て言うか……。
コーネリアちゃんにハッキリ言われたのに驚いているのか信号機くんたちは固まって何も言えないで居る。
「じゃあ、帰ろうか、クロス」
「……ああ」
「じゃ、コーネリアちゃん。 お手をどうぞ」
クロスが不機嫌そうなのは仕方ないか。
レイファがコーネリアちゃんっをエスコートするように手を差し出してる。
「どうして、レイファがその女と話してるのよ! しかも、クロスまで! レイファとクロスは私にメロメロになるはずでしょ!」
いきなりの桃色の子の言葉に私はビックリした。
いや、何でクロスとレイファの名前を呼び捨てにしてるか分かんないけど急に何?
しかも、メロメロって……無理でしょ。
レイファはここが現実って分かってからは激しい女遊びは止めてるし、クロスは煩い女の子は嫌いって言ってたし。




