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内緒話は密室で②

 


「だが、俺はどこかでアヤミを疑っていた」



「え?」



「俺は帝国の人間を恨んでいる。 母さんと俺を見捨てた父親も、偉そうなだけの貴族も、虐げられてるのに何もしないで受け入れる国民も、……帝国なんて滅んでしまえばいい……俺はそれほど帝国が嫌いだ、今でもな」




……クロスはクロス自身すら恨みの対象だったのかな。

今も消えたはずの印があった場所に爪を立てて、裸になった時に見えたけど印の周りには傷跡や燃やそうとしたのか火傷の痕もあった。

王国の人に見せるわけにもいかなくてずっと一人で悩んでいたのかも。




「だから、シェイルにアヤミが帝国の人間かもしれないと聞かされて、そんなわけがないと思いながらも俺はアヤミを疑ってもいた。 ……初めて好きになった奴さえも信じられなかった」



「それは……私が怪しかったんだから仕方ないんじゃない?」




出会ってまだそんなに経ってない人間なんて信じられなくても当たり前だと思うし。

好きだからってそれだけで信用されても微妙な感じがするし……これが結婚してるのに信じてなかったとかならまた話は変わってくるとは思うけどね。




「いや、俺がアヤミを信じ切れなかったせいでアヤミは傷ついて起きなくなってしまった。 俺がアヤミを信じて守っていればそんなことはなかったかもしれない」



「……正直あれは黒歴史だから忘れてほしい」




人を殺してしまった衝撃であの世に逝きかけたのは今でもあり得ないと思うから。

あの衝撃は今も忘れられないし、もう人を殺すことなんてしたくないけど私はここで生きることを決めたからね。

自分の身や大切な人を守る為には私は戦うよ。




「俺はジルさんから受け継いだ帝を辞めることに決めた、もう二度とアヤミを傷つけさせない為に」



「……」




それは私に言っちゃっていいわけ?

色々言いたいことはあるけどやっぱクロスは帝だったんだね、何となくは予想してたけれども。


てか、私の為に辞めるなんて止めてほしかったよ。




「アヤミ、俺をずっとアヤミの傍に居させてほしい」




……そんなの重い気持ちを持たれても…………って最初の頃なら思ってただろうになー。

絆されたのか、身内判定になったから甘くなったのか、……今の私からは否定する言葉は出ない。




「嫌だって言ったら離れるの?」



「それはない」



「じゃあ、意味ないじゃん」




否定するつもりはなかったけど……。


私の肩に乗ってるクロスの頭をぽんぽんと撫でる。

認めるつもりがないなら否定しなきゃいけないのにな。




「アヤミ……」



「私はクロスと同じ気持ちは返せないけど、クロスはアルフと同じように大事だよ」




クロスにどんな過去があろうともそれだけでクロスを拒否出来ないくらいには大切になったんだな。

今、クロスが居なくなったら寂しさもあるかもね。




「……ありがとう」




それから私たちは眠たくなるまでそのままで居た。

ほとんど会話なんてなかったけど、何だか落ち着く時間だった。



 

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