第三皇子⑥
それにしても、帝国に生まれただけでマークをつける、奴隷にマークをつける、何でそんなにマークが好きなんだろうね。
帝国作った人がマーク好きだったのかな?
あんまり趣味が良いとは言えないけどね。
「俺は帝国の貴族に生まれたが魔力がなく幼い頃はいつも蔑まれていた。 魔力のない俺は五歳の時にマルトの森に捨てられた」
「マルトの森は強い魔物が多くて今の僕じゃすぐに死んじゃうってクロス兄が言ってたよ」
クロスの言葉の足りない部分はアルフが補足してくれてる。
帝国のマークとかマルトの森とかほぼ店から出ない私には分からないから補足してくれるのはありがたいね。
それにしても、クロスがまんまネット小説にあったテンプレの最強主人公っぽいね……小説の中じゃなくて現実にあったことだからあまり何も言えないけど。
「元帝のジルさんに拾われた後に魔力が覚醒したんだ」
「黒の破壊者ってのはいつから呼ばれてるの?」
「……よく覚えていないが五年前の帝国との戦争からだったと思う」
亡くなった人には悪いけど戦争時に来なくて本当によかった。
戦争時に来たらのんびりお店なんて出来なかっただろうし、戦争に駆り出されてたかもしれない。
こっちに来てすぐに戦争に参加してたらこっちに残るなんて選択はしなかったと思う。
「だから、あんなに怯えられてたんだね。 名前聞いただけであんなに注目浴びてたから何かあったんだろうとは思ったけど」
「大したことはしてない」
「いやいや、やってなきゃあんなに怯えられないよ」
私はいつものクロスを知ってるから怖がることはないよ。
まあ、本気の殺気を当てられたなら怖くなるかもしれない、クロスが私に殺気を向けるなんてことはないと思うけど。
いつものような掛け合いをしてると真剣な表情だったクロスの表情が柔らかくなっている。
「……アヤミは何も言わないんだな」
「え? 結構色々言ってると思うけど?」
流石にあんな話を聞いてて何も思わない人は居ないだろうし、結構色々言いながら聞いてたと思うけど……。
「俺が戦争に参加したこととか……人殺しとか……」
「戦争があったんだから人が死ぬのは仕方ないよね。 戦争なんてない方がいいけど人の欲がなくならない限り戦争はなくならないし」
昔に”一人殺せば殺人者、百万人殺せば英雄だ”なんて言葉を聞いたことがあるくらいだったしね。
戦争を経験したことないからどんなのか分からないけど私がとやかく言う意味がないでしょ。
別に戦争で誰か知り合いを殺されたわけじゃないし。
大切な人が殺されたりとかしたら、また思うことは別なんだろうけどね。




