第三皇子④
黒の破壊者って名前はそんなに恐れられているの?
……黒の破壊者にどんな噂があるのか気になる……。
「お前……」
「レ、レイファ様っ、行きましょう!!」
呆然としていた第三皇子が私に声をかけようとしていたけど、慌てた美女二人に引っ張られそのまま出て行った。
怖がっているとは言え第三皇子をあんな扱いして大丈夫なの?
第三皇子一行が出て行った後も私たちに視線が集まったまま、……恥ずかしいから出よう。
「クロス、迷惑かけちゃったからもう出ようか」
「ああ、構わない」
流石にこんなに見られてる中でご飯を食べるなんてしたくない、迷惑をかけたんだからどの道追い出されるかもしれないけど。
私たちがお店を出ようとすると誰かに服を引っ張られる感覚がした。
後ろを振り返ると先ほどの少女が私の服を掴んでいた、奥には慌てたように娘である少女を止めたそうにしている男の人が見える。
「どうしたの?」
少女に視線を合わせるようにしゃがむと優しく問いかける。
さっき泣いていたのか顔に涙の痕があるのがちょっと可哀相な感じがあるけど、殴られなくてよかった。
あの第三皇子と美女たちならもしかしたら殴っていた可能性もあるからね。
「あの……ありがとうございました」
「……娘を助けて頂きありがとうございました」
うろうろと視線が泳いでいたが決意をしたように私を見上げると小さな笑みを浮かべ、男の人も少女のお礼にハッとしたような顔をすれば慌てて頭を下げる。
ただ同じ日本人らしき人があんな横暴なことをしてるのが許せなかっただけだし、後のことなんて全く考えていなかったからまた第三皇子が戻って来たらとか色々あるけど……でもこの子が今は無事でよかった。
「いえ、私があの横暴さに耐えられなかったので……ご迷惑をお掛け致しました」
「またいらして下さい」
「ありがとうございます」
男の人に頭を下げると私たちはお店から出て行く、少女は私たちに手を振ってくれた。
やっぱ素直な小さい子は可愛いな。
「ごめんね、私のせいでご飯食べれなくて」
「ううん、大丈夫だよ」
「飯屋なんてたくさんあるからな。 屋台もあるからそっちでもいいぞ」
……やっぱりアルフが一番素直で可愛いよ。
弟ってこんなに可愛いもんなんだね、将来に反抗期がきてしまったら悲しいけど。
「うん、そうしよっか」
このお店では食べられなかったけど、他にも美味しそうなお店はあるから楽しみだよ。
私たちはこの後、屋台に向かいたくさん食べることにした。
あんな第三皇子には何にも頼んだりしないんだから。




