第三皇子③
「は? え?」
「何なのこの女っ」
「レイファ様に向かって意味の分からない事言わないで!」
第三皇子はぽかんとしてしまっているが周りの美女が私を睨んでいる。
こんな最低な第三皇子に手を貸してもらう為に私たちは歩き回っていた事にすら苛立ちを感じてしまう。
こんな馬鹿皇子になんかにお願いなんて絶対しない。
何がこの世界の主人公よ。
この世界を物語だとでも思ってるの?……なんて、そんな馬鹿な事は思っても居ないと思うけど。
「クロス、アルフ、行こう! こんな人と話す事はないから!」
「なっ、無礼な!」
ガタっと音を立てて美女の一人が立ち上がった、私に詰め寄ろうとしたが私の前にクロスが立ちはだかる。
いきなり現れたクロスにびっくりした美女だったけど、クロスの見た目がまだ子供なので侮っているようだった。
「アヤミに手を出すな」
「関係ない坊やは引っ込んでなさい」
美女に睨みつけられても全然気にしてないクロスは平然といてる。
……庇われてる私の方が心臓がバクバクしてちょっとヤバいかもしれない……。
「ちょ、ちょっとリアーナ……」
クロスと美女が睨み合ってるともう一人の美女が睨み合ってる方の美女を呼んだ。
……美女って言い過ぎて美女がゲシュタルト崩壊しそうな感じがするけど気にしない事にしよう。
「何よ、セリナ。 今はこのブスとガキに大人ってのをわからせてやるのよ」
「……それは賛成ではあるんだけど」
少し言いにくそうにしている美女はクロスが登場してからそわそわしていたけど、どうかしたのかな。
チラチラとクロスを見てるけど……クロスの容姿に見とれてるってわけじゃなさそうで……どっちかと言えば、怖がってる感じ?
「もう、何なのよ!」
「今日ギルドに行った時聞いたじゃん? 黒の破壊者がアルフェイリドに来てるって……その特徴って……」
「今話す事じゃないでしょ」
ああ、怖がっている方の美女はクロスがその黒の破壊者って気づいてしまったんだ。
何でクロスにそんな怯えているのかよく分からないんだけどね。
店の中は静かになっていてお客さんは私たちに注目している。
「いいから!」
「もう……確か綺麗な黒の長髪に血のような赤い目の子供で、女と黒の破壊者より小さな子供と三人組でしょ。 関わり合いになりたくないから覚えてるわよ」
美女の言葉に更に私たちに、特にクロスに視線が注目している。
いびられてた男の人はまさかと言わんばかりに目を見開いているし、怖がっている美女もクロスに視線を移す。
不思議そうにしてるもう一人の美女も視線をクロスに移した。
「……え……」
先ほどまで言い合ってた美女はクロスを見て、私を見て、アルフを見る。
そして、段々とその顔が青くなったきた……青くならなくてもクロスも私たちも何もしないけど。




