帝国の闇③
「クロス、黒の破壊者って何?」
「さあ? いつの間にかそう呼ばれて居たな」
クロスって自分の事にはちょっと無頓着な所あるよね、クロスらしいと言えばらしいけど。
どんな事をしたらそんな物騒な名前で呼ばれるようになるのよ。
「これはこれは黒の破壊者様。 ようこそ我がギルドへ」
にこにこと笑みを浮かべてやって来たのは黒のモノクルをかけシルクハットを被った所謂”紳士”って感じの服装の男の人。
……失礼かもしれないけどちょっと胡散臭い感じがするのは私だけなのかな?
「わざわざマスターが出てくる必要はないだろう」
「申し訳ございません、うちの者が黒の破壊者様に失礼をしたそうなので私自らやって参りました。 奥でお話を聞きますので宜しければそちらへ」
クロスは何もしてないのに結構な騒ぎになってるっぽいもんね。
今も遠巻きに見てる人が多いし……あまり注目を浴びて面倒になる事は避けたいし、ちょっと胡散臭くてもこの人の言う通りにした方が良さそうだよね。
クロスが私の事を見てきたのでこくりと頷く。
「わかった、案内しろ」
「承知して頂けて何よりです。 それでは、こちらへ」
何も知らない私が出しゃばっても良い事はないので年下に頼るのはあれだけどクロスに対応は任せよう。
ここのギルドマスターさんに案内された部屋は応接室なのかソファーと机、後は本棚に本がぎっしり詰まっている。
ソファーにはクロス、私、アルフの順に座った、目の前にはにこにことした笑顔のギルドマスターさんが座ってるけど……どうしてこんなに胡散臭そうに思えるんだろう。
いい人かもしれないんだから見た目で判断するのはいけないいけない。
「話を聞いたらさっさと帰るぞ」
「おやおや、つれないですね。 久し振りにお会いしましたのに、お連れのお嬢様についてもお聞きしたいですね」
ギルドマスターさんと知り合いなのか気安いってか何か違和感があるけど、私が知らないクロスだってあるよね。
「教える必要はない」
「ふふ、わかりました。 あまり無理は言いません。 それで、どのような情報が欲しいのですか?」
「帝国の跡目争いについて」
クロスの直球な問いかけにビックリしてしまうも、ギルドマスターさんはにこにこと笑顔のまま。
いや、この問いかけにも笑顔のままってやっぱおかしい人?
「おや、それはつまり……」
「少し用事があるだけだ」
「まあ、今はそういうことにしておきますよ」
何のことか私にはわからないけどクロスがわかっているなら後で説明してくれるよね。
にこにこしたままのギルドマスターさんは立ち上がると本棚に何かしてるけど背中しか見えないから何をしているのかはわからない。
しばらくすると本棚が横に動いた。




