帝国の闇②
宿は何事もなく取れたので私たちはギルドに向かうことにした。
宿やギルドに行くまでの間に街を見てみたけど、特に何もなく人々は賑わっている。
結構酷い話を聞いたりしてたけどそんなに酷いって感じじゃないよね。
ギルドの中に入ると何だか煙たいような感じもするけど、……それよりも言っちゃ悪いかもしれないけど汚くない?
あちこち汚れてるし、外側は綺麗だったから違和感あるんだけど。
「ここはガキが来る場所じゃねえぜ」
ギャハハハと汚い笑い声を出しながら私たちを嘲笑う男たち、酒を飲んでるのか顔は赤いしお酒臭い……よくある王道な新人イビリとかしてそうな感じのギルド!
あっちのギルドは戦マスターが嫌なだけだけど、こっちは全体的に嫌かも。
クロスは特に気にしてないのかすたすたと受付まで歩いて行く後を私とアルフもクロスから離れないように向かう。
「依頼の情報が欲しいんだが」
「おいおい、ガキに無視されてんじゃねえか」
「無視してんじゃねえぞ、ガキ!」
嘲笑われたり、罵倒するような声が聞こえる中受付にギルドカードを出したクロス。
受付の男の人はめんどくさそうに欠伸をしていてクロスを見下しているようだが、ちらりとギルドカードに視線を移したかと思えば段々と顔が青くなってきた。
ブルブルと体を震わしギルドカードを凝視してる受付の男の人の様子がおかしいことに気づいたのか、同僚の女の人が近づいてくる。
「ねえ、どうしたのよ?」
「く……」
「……く?」
「黒の破壊者……」
はたから見ても分かるくらい真っ青になってる男の人の様子に騒がしかったギルドも静かになっていた。
そんな静かなギルドの中なので男の人の小さな声でもはっきりと聞こえた。
てか、黒の破壊者って何?
クロスのギルドカードを見てって事だからクロスの事なのはわかるんだけど……クロスってそんな中二病的な名前で呼ばれてるの?
私は知らないのでそんな反応しか出来なかったけど、周りは違ったみたい。
さっきクロスに喧嘩売ってた男は受付の人と同じくらい真っ青だし、クロスを嘲笑っていた男たちも驚愕に目を見開いている。
クロスってこの世界では有名なの?
「……おい、なんだって黒の破壊者が帝国に居るんだよ」
「そんなの俺が知るわけないだろが。 ……それよりアンドリューの奴ら終わったな」
ギルド内で聞こえるひそひそ話だけど静かだから普通に聞こえてひそひそ話になってないんだけど。
アルフは特に何も言わずに大人しいからアルフは知っていたのかもしれないね。
「おい……」
「はっはい! 依頼でございますね! すぐにお持ちします!」
固まっていた受付の男の人だってけど、クロスに再び声をかけられると体を九十度曲げ慌ててギルドの奥に走って行った。
いつの間にかクロスに絡んできた男たちは居なくなっていて、ギルドの人も遠巻きにこっちを見ている。




