この世界で生きる為に⑤
「何だ?」
シュンッといきなり受付さんの後ろに商業ギルドのマスターが現れればビックリする。
転移ってやつ?
受付さんから訳を聞いたのかギルドマスターがこちらに向かって来る。
「着いて来い」
一言告げればギルドマスターは私に背を向けて歩き出した。
別室で話すのかな?
不思議に思いながらもアルフの手を引いてギルドマスターに着いて行く。
部屋に着けばギルドマスターはすぐに中に入って行ったので私も中に入る。
モノトーンの部屋で中々に綺麗な部屋だ。
机の上には書類らしき紙が積み上げられてるけど。
商業ギルドのマスターにはピッタリの部屋かもしれない。
応接室的な感じめ兼ねてる部屋なのだろうか。
キョロキョロと辺りを見回して居れば不思議そうに首を傾げているギルドマスター。
……確かに部屋をキョロキョロしてたら不審者に見えるかも。
「何かご用ですか?」
多分、店のことだろうとわかっていながらもギルドマスターに問い掛ける。
「まず座るがいい」
目の前にある黒のソファを勧められる。
商業ギルドのマスターは嫌いじゃないタイプかも。
アルフと一緒にソファに座ればソファが沈む。
……何だこのソファ、凄い座り心地がよくて気持ちいい。
アルフも気に入ったのかバタバタと足を動かしながら喜んでいる。
「どうぞ」
水色の綺麗な髪をした美人なお姉さんが紅茶らしき物を出してくれた。
何時の間に居たんだろう?
「また紅茶か……ウィル、珈琲はないのか?」
「有りません」
ギルドマスターの問い掛けにウィルと呼ばれたお姉さんはキッパリと笑顔で答えた。
美人なお姉さんは美しいから憧れる。
「コイツは俺の使い魔で水の精霊王のウィルだ」
私がぼんやりとお姉さんを見上げて居ればギルドマスターがお姉さんを紹介してくれた。
……お姉さん、使い魔だったのか(しかも水の精霊王)
「ウィルって呼んで下さい」
「ウィル、さん?」
呼び捨てなんて無理っ。
むしろ、ウィル様って呼びたいくらいなのに……。
「可愛らしい方」
クスクスと笑うウィルさん。
可愛いなんて言葉、私には合いませんよ?
身長は165あるけど体重が70以上あるデブです。
「アヤミ・ファレスだったな?」
「はい」
「登録を止めるのはもしかしてシェイルが原因か?」
単刀直入に聞き過ぎです、ギルドマスター。
戦闘ギルドのマスターの事も色々考えたけど今回の話には関係ない。
「いえ、違います」
ギルドマスターにも言えないよね、この国のお姫様が問題なんですって。