ルーヘン村の攻防⑩
「そうしてくれ」
「アヤミさんらはアルドラに行くんですか?」
「行き先は違うけど通り道だよ」
流石に今の状況で帝国に行くなんて言えるわけもない。
理由なんて答えられないし、アルベルト君は多分帝国のせいで村が襲撃されたんだからね。
混魔石をクロスから受け取れば鞄にちゃんとしまう。
そのまま入れておくのも何か嫌なのでタオルできちんと包んでから。
「じゃあ、明日一緒に行きませんか? もう夜になるんで村に泊まってって下さい」
「アルベルト君もアルドラ行くの?」
確かに暗くなってきたし、アルフも話を邪魔しないように静かにしてるけど眠たそう。
今日はたくさん歩いたし疲れるのも仕方ないよね。
「はい、明日は母さんの薬を取りに行く日で行商人の叔父さんが馬車で送ってくれるんです」
「でも、悪いでしょ」
「いえ、アヤミさんのおかげで村も無事ですし……ルルにも怪我ありませんから」
やー、結構家を壊してしまったけどね、壊したのはゴブリンキングだけど私が屋根の上に乗ってたから攻撃してきたし。
大半はクロスのおかげで助かったからね、あの時クロスが来てくれなかったら私大怪我どころじゃなかった。
将来結婚するかどうかもわからないけど、初めてがゴブリンとか死んでも嫌。
「アヤミは俺らと行く」
ムスッとしながらも珍しくクロスがアルベルト君に言ってる。
「あ? テメェには関係ねぇだろが」
クロスを睨み返しながらアルベルト君は反論してるけど、クロスは無関係じゃないからね。
クロスが嫌いなのはわかってるけど……。
「うるさい、引っ込んでろ」
「何だと、やるかテメェ?」
バチバチと音が聞こえてきそうなくらい睨み合ってるけど、これって私が止めた方がいいよね?
ってか、私以外に止める人なんて居ないよね?
これが漫画の世界なら私のために争わないで状態だけど、漫画じゃなくて現実だし、可愛いヒロインじゃなくて私だよ?
正直似合わないでしょ。
「クロス、いい加減止めてよ。 アルベルト君は好意で言ってくれてるだけなんだからね」
混魔石のこともあるし、夜になってしまったから野宿させるの悪いと思ってるんでしょうに。
病気のお母さんが居る家に泊まるのは申し訳ないけど、アルフも眠たいのか先ほどから目を擦ったりしてるから早めに寝かせてあげたい。
まだまだ成長期なんだから三食食べてきちんと睡眠も取らせなきゃ。
「……アヤミが言うなら」
すっごい文句ありそうだがクロスは渋々頷いている。
……自惚れが凄いかもしれないけど多分嫉妬してるんだろうね。
「アルベルト君、ごめんだけどお願い出来る? 全員同じ部屋でいいから」
「リストルは俺の部屋で寝せますよ。 アヤミさんはこっちの部屋を使って下さい」
野宿する時は同じとこで寝たり見張りしてりするから構わなかったんだけど、アルベルト君は気にするのか私を部屋に案内してくれる。
アルフを抱き上げるとアルベルト君の案内してくれた部屋に入る、アルベルト君はテキパキと布団を敷いてくれた。
「ありがとう、ごめんね」
「いえ、こっちが言い出したことですから。 おやすみなさい」
「アヤミ、おやすみ」
「おやすみ」
アルフを布団に寝かせてあげれば優しく布団をかけてあげる。
クロスとアルベルト君に寝る前の挨拶をすれぱ二人は険悪のままアルベルト君の部屋に行くみたい。
明日はアルベルト君の叔父さんが来るみたいだし、いつ来るかわからないから早めに起きないとね。
私は布団に横になればアルフを優しく撫でてから目を閉じ眠りについた。




