ルーヘン村の攻防⑧
しばらくするとクロスとアルベルト君が帰ってきた。
二人とも特に怪我はなさそうだったけど、返り血をたくさん浴びたのか血塗れだった。
「アヤミ、ただいま」
「リストル、井戸で体洗えよ」
血塗れのまま家には入って欲しくないのか私に駆け寄ろうとしたクロスを止めてアルベルト君は歩き出す。
クロスは眉をひそめるが自分が血塗れなのは本当なので仕方なくアルベルト君について行く。
「アルフ、ゴブリンキングって強いの?」
「もちろん、Bランクの魔物だもん。 アヤ姉が戦ってたって聞いてビックリしたんだからね」
泣いてしまったからすごく目が赤くなってるアルフは私を心配そうに見ている。
いや、……私も戦いたくて戦ったわけじゃないんだけどね、なるべくなら戦いたくないし。
「心配かけてごめんね」
「次、同じ事があったら僕も戦うからね!」
流石に次はあってほしくないけど。
これから帝国に行くんだから戦う必要ある時があるかもしれないし、クロスに頼んでこの旅の間にちょっと修行つけて貰おうかな。
「次、なんてない。 もう俺がアヤミから離れることはないからな」
さっさと血を流してきたのか髪が濡れたままクロスが戻ってきた。
服が変わっているのはアルベルト君に借りたんだろう、流石に洗濯するか買い替えるかしないといけないくらいの返り血だったしね。
「私ももうあんなのと戦いたくはないよ」
軽く魔法の修行はしたけど戦うことを考えて修行してたわけじゃないし、どちらかと言えば逃げるために修行してたからね。
「アヤミさん、申し訳ありません!」
アルベルト君も体の血を落とせたのか戻ってくるなり私に土下座した。
はい? 何でアルベルト君が謝ってるわけ??
「ア、アルベルト君? とりあえず、顔を上げて!」
「いえ! ルルのせいで申し訳ないです」
年はまだクロスより近いけど、年下のアルベルト君に土下座されるなんてあり得ない!
ルルーゼちゃんが来た時にはビックリして心配したけど、ルルーゼちゃんのせいだなんて思ってもないし。
ただ私を心配して無茶なことをしたんだから私の方が申し訳ないよ。
「ルルーゼちゃんが無事でよかったよ」
「アヤミさんが守ってくれたおかげです。 ルルはちょっと寝ちゃってますが明日ちゃんと叱っておきますから!」
あれだけ泣いてたから寝ちゃうのは仕方ないよね、まだまだ幼い子供なんだから。
明日、大好きなお兄ちゃんから怒られたらまたルルーゼちゃん泣いちゃわないかな……。
「気にしないで。 それで、山には何かあった?」
いつまでも土下座されたくないのでアルベルト君には体を起こしてもらう。
山から帰ってきてすぐにゴブリンとの戦いが始まったから聞けなかったけど、何回も襲撃があったなら何かあったのかもしれない。
「ああ、こんなのがあった」
クロスが私には見せたのは青色の手のひらより大きな丸い水晶みたいなの、占い師が使ってそうなあんなやつ。




