ルーヘン村の攻防⑥
私が女だからなのか、ゴブリンキングは私に狙いを定めているようだ。
足下に居る村の人はスルーして私に向かって歩いてくる。
「逃げろ!」
村の人達が叫んでくれてるけど、今逃げたって多分追いつかれる。
それにこの村は街のように石で出来た家じゃないからゴブリンキングの力ならすぐに破壊されてしまう。
大人子供見境無しに襲う獣ならルルーゼちゃんも危ないでしょ。
「弾丸でも食らって!」
持っていた拳銃を取り出せばゴブリンキングに向かって撃つ。
あの神様から貰った創造で作ったんだから少しは効くでしょう。
慣れない拳銃を撃ったから少しよろけて転けてしまうがまだ問題ない。
更にもう一発胸元目掛けて撃った。
弾はゴブリンキングにあたったのか先ほどとは違ってゴブリンキングの唸り声が響く。
よく見たら肩の辺りと胸元辺りの二カ所から赤色の血が流れてるのが見える。
魔物なのに血の色は同じだもんね。
ゴブリンキングは先ほどまでと違い自分に傷をつけたことを怒っているのか更に顔が険しくなったようにも見える。
そして、棍棒を私が居た家の屋根に振り下ろす。
私は慌てて風を身に纏い違う家の屋根に飛び移った。
「あー!」
村の人の家なのに!!
人が避難した家ではないのがわかったからちょっと屋根を借りたのに……。
生きるか死ぬかの瀬戸際に何をって思うかもしれないけど弁償しなきゃ。
「図体大きいくせに素早さもあるなんて狡い」
探知能力も使って人が避難してるほうに行かないように気をつけてる。
一カ所に留まるとまた棍棒を振り回してくるので空を飛びながら狙える時を狙って撃つ。
クロスが帰ってくるまで保てばよし!
ゴブリンキングは私しか狙ってないし、まだただのゴブリンなら村の人も戦えてるみたいだ。
私は思ったより逃げれてることに油断していたのかもしれない。
「お姉ちゃん!」
聞こえるはずのないルルーゼちゃんの声に思わず足が止まってしまった。
その私の隙を見てゴブリンキングは棍棒を振り下ろす。
家は壊れたが、私は何とか逃げれた。
二人の家の方から駆けて来ようとしてるのは紛れもなくルルーゼちゃんだった。
大きい音がしてたから心配になって出て来たのかもしれない。
私はすぐにルルーゼちゃんに向かって走る。
「ルルーゼちゃん! 危ない!!」
だけど、ルルーゼちゃんの近くには普通のゴブリンが居た。
ゴブリンは怪我をしていて錯乱しているのか持っていた棍棒をルルーゼちゃんに向かって振り上げてる。
させないっ!!
私はルルーゼちゃんを怪我させないように抱え込み体を丸めた。
少しでも体にくる衝撃に耐えるように……。




