ルーヘン村の攻防②
「アヤミ、大丈夫か?」
「私は戦ってもないから大丈夫だよ」
クロスが心配そうに私に言ってくるけど、遠くから手当てしてた私に何かあるわけないでしょ。
「あの、妹は……?」
「何かあってもいけないからアルフと一緒に家にいるよ」
ホッとした様子のアルベルト君。
ヤンキーみたいな見た目なのに妹想いってのはギャップがあっていいね。
まだまだ先だろうけどルルーゼちゃんに恋人が出来たらどんな反応するかな。
怪我した人は数人居たが大怪我した人や死んだ人は居なかったみたいだからまだよかったよ。
「……それにしても、グランドウルフが降りてくるなんてな」
「クロス、そんなに珍しいの?」
「グランドウルフは滅多に自分たちの縄張りから出て来ない。 十四年くらい前に餌がなくなり降りてきた記録はあったが」
村の人達も似たようなこと言ってたけどそんなに珍しいことなんだ。
何十年も住んでる人が言うなら確かなことなんだろうけど、何か山であったのかな?
山の魔物なら他の魔物に縄張りから追い出されたとか……、来るときに果物とか木の実とかは生ってるみたいだったから食べ物がないってことは今はないと思うんだけど。
あれ?狼って肉食だったっけ?
「……リストル、頼みがある。 今から山を探索したい、手伝ってくれ」
私はぼんやり考えていたが不意に厳しい声で言いアルベルト君はクロスを見た。
あんなにクロスを嫌そうにしていたアルベルト君だけど今の出来事に何かあるのかクロスに頼み事をしてる。
確かに山を探索するならある程度の力を持った人じゃないと無理でしょうし、アルベルト君はクロスを嫌っているけどクロスの能力はわかってるみたいだし。
「クロス、お願い出来るならお願いしていい?」
「いいのか?」
早く帝国に行きたい気持ちはあるけど、自分の気持ちよりも村が大切なアルベルト君を見てたら拒否な
んてできないよ。
私がクロスに強要もしたくないからクロスにお願いするしかない。
私も手伝ってあげたいけど戦闘能力皆無な私が山に行ってもただ死ぬだけだからね。
「アヤミがいいなら俺は構わない」
「……お願いしてる立場からなんだけど、クロスはいいの?」
私の為なら何でもするかもしれないね、クロス。
私的には行ってもらえるのはありがたいけどクロスの意思は?って心配になる。
いや、そんなに我が儘言うつもりはないけどまた同じようなことがあったらまたお願いするかもしれないし。
「俺は俺の意思でアヤミの願いを聞くんだ。 アヤミがやりたい事は俺もやりたいし、アヤミが困っているならそれは助けたい」
ふっと小さな笑みを浮かべるクロス。
……ただでさえイケメンなのにそんな笑みを浮かべられたらドキドキして困る。
年齢差さえなければ多分気にしなかったけどやっぱ年齢差は気になるよ。