ルーヘン村の攻防
叫び声が聞こえるとアルベルト君はすぐに声が聞こえる方に走って行く。
クロスがちらりと私を見たので頷くと、クロスのその後を追って行った。
「お姉ちゃん……」
不安げなルルーゼちゃんの表情に安心させるような笑みを浮かべる。
「お兄ちゃん達は強いから大丈夫よ。 アルフ、家の中でルルーゼちゃんと待っててね」
「アヤ姉は?」
「私は怪我した人がいるかもしれないから手当てを手伝ってくるよ」
クロスやアルベルト君みたいな年下が戦っているのだから私はそれぐらいはやらなきゃ。
何が起こってるのかもわからないし、怖いけど手伝いくらいは出来る。
アルフは心配そうに私を見上げていたがコクリと頷いてルルーゼちゃんと一緒に家の中にと戻って行く。
何があるかわからないからルルーゼちゃんみたいに小さい子は家の中のが安全でしょ。
鞄から救急箱を取り出せば叫び声が聞こえた方に私も向かう。
村の入口に着けばクロスとアルベルト君が村の外に出て、狼と戦っていた。
村のすぐ側なので魔法を使ったら危ないのか剣で戦うクロスと手にグローブか何かをつけて戦っているアルベルト君。
入口付近には男の人が農具を持って警戒していた。
怪我をしている人も居るようなので私はすぐに近付いていく。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ……アンタはアル坊の客人か」
「はい、手当てしますね」
腕から血が流れているけどそんなに量は多くないのか普通の声色のおじさん。
アル坊ってのはアルベルト君のあだ名みたいなものな。
おじさんの近くに寄ればおじさんの袖をまくりまずは魔法で水を出し傷を洗う。
やはり痛みを感じるのかおじさんは顔を歪めているが我慢してもらうしかない。
あんな狼に傷付けられたのなら細菌とかあるかもしれないからしっかり洗わないと。
洗い終えれば血はまだ出てるので綺麗なガーゼで傷を押さえる。
止血しないと血を増やす薬なんかはないし、いつまでも血を流してると貧血になるでしょ。
狼は数十匹の群れだったみたいだけどクロスとアルベルト君の戦闘能力が高いのかもう残り数匹になっている。
アルベルト君はまだ怪我が痛むだろうに戦って大丈夫なのかな。
「グランドウルフが山から降りてくるなんて滅多にないのにな」
「ああ、しかも群れでだと」
ガーゼを押さえるのを代わってもらえば不意にそんな会話が聞こえてくる。
グランドウルフってあの狼のことかな?
確かに街道からでも大きな山が見えてたけどこの狼たちはあその山に住んでるのか。
よく山から降りてくるならただ不幸があっただけだと思えるけど、滅多にないことなら何かあったのかもしれない。
まあ、私が考えても何があったかなんてわからないし、クロスならわかるかな。
そうこうしている間に戦闘が終わったのかクロスは剣をしまっていた。