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しるし2(詩集)

掘る

作者: さゆみ


犬が穴を掘っている。世界の果てのような場所で、前足を激しく上下に刻み続ける。天も地も見分けがつかないような場所で、犬が穴を掘っている。下向きな尾を後ろ足に挟みこみ、ひた向きに掘り続ける。


A「何かを探しているのかしら」B「いや、ただの気まぐれさ」C「ああ、無性に掘りたくなるときってあるよ」A「そうね」B「そうかもな」C「ああ、そうさ」


A「ところで今日はいつ?」 B「さあ、いつだろう」C「昨日より進んだ日さ」A「見えないのよ」B「見えないよな」C「別に見えなくていいさ」A 「でも不安じゃない? 」B「不安?」 C「いや全然」


A「時々、掘りたくなるの」B「え? 何を?」C「何でもいいのさ」A「そう、何でもいいの」B「わからないな」C「掘りかえして懺悔して悦に浸るんだろう」A「さあ、どうかしら」B「ああ悲劇のヒロインか」C「何にも変わりやしないのに」


犬が穴を掘っている。やがて低く唸りながら前足からは血が流れ、あと僅かで引きちぎれてしまうような勢いで、犬が穴を掘っている。後ろ足で必死に体勢を支えながら一心不乱に掘り続ける。


A「まだ掘るのかしら?」B「憐れだな」C「そのうち気付くだろう」A「宝なんかないことに?」B「でもゴミだって宝になるんじゃないか?」C「よく見てみろよ」A、B「うん!? ああ…… 」C「そうさ。穴なんか一ミリもあいていない。あいていないんだよ」





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― 新着の感想 ―
[一言]  とても象徴的で、読ませてただくと自省の念が感じられるようでした。  私は、もしかしたらこの作品のように穴を掘っていないか。  もっと建設的な考えをもって過ごしていかなければと言うような。 …
2016/01/03 10:34 退会済み
管理
[一言] 哲学的な印象を受けました。 個人的には、その先に何が無くとも己の道を進むという考えは好きなのですが、この物語にはそれ以上の意味が込められている様な気がしてなりません。 宝探しといえば言葉は良…
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